悲しい・・・。
★☆☆☆☆
誰もが手軽に見れる映画という媒体で、実在した人物を歪曲して描く責任は問われないのだろうか。
おそらく一般の鑑賞者は、彼らの伝記を読んだり音楽を聴いたりする以前に、彼らの人物像をこの映画に与えられたとおりに受け取ってしまうだろう。
できるだけ多くの伝記や文献を読み、作品を聴いて自分が感じ取った彼らの人物像と、この映画の登場人物は殆ど結び付かない。
この監督はただヨハネスの親類の子孫と言うだけで、単に出来事の下調べをしたにすぎない。
その仕事も非常に雑で、曲の時代背景は目茶苦茶な上、シューマン夫妻とヨハネスの出会いを始め、史実と異なる場面が多々ある。
シューマン家訪問の場面では、ヨハネスの作品が彼自身によって演奏されることが重要だったのに。
彼らに対する敬意どころか、彼らの音楽への愛すら感じられない。
クララが指揮をする場面、ローベルトのクララへの暴力、ヨハネスの「あからさまな」性的欲求、こんなものは必然性も何もない。
女の社会的な地位の低さへの提言や、女の強さをテーマにしたいのであれば、彼らを利用しないで欲しい。
あれだけ当の本人たちの手紙や日記が残っている中で、監督は一体何を読み取ったのか。
ゴシップ的なスキャンダラスな部分のみを強調し、それぞれの複雑に絡み合う愛情の描かれ方があまりにも不十分。
この3人の関係は、晩年のヨハネスとクララの関係までしっかり描かれてこそ完結する。
実在の人物を題材にしている以上、作品を送り出した責任を痛感して欲しいものだ。
楽しめました
★★★☆☆
ブラームスやシューマン(今年は生誕200年らしいが)という余り普段は聞かない作曲家の曲のすばらしさを再確認することができました。ライン、ピアノ協奏曲(ブラームスとシューマン)ってこんなにすばらしい作品でしたっけ。また余り史実に詳しくなかったので或る程度、歴史の勉強にもなりました。ただシューマンの病気については詳しいことはほとんど言及されていないようです。また印象ですが、これはドイツ語で喋っている映画なのでしょうか?俳優はハンガリー系の名前が多いし、口もなんとなくドイツ語ではないような印象を受けましたが?
突出したところはないが、見どころ豊富
★★★☆☆
若きブラームスと、クララ・シューマンのプラトニックラヴを背景に、シューマンの晩年を描いた伝記的作品。
シューマンの代わりに指揮をするクララの指揮が、合唱などで見られるフィーリング指揮なので驚いた。たぶん、史実に基づいているのだろう。あれでオーケストラがついていけたのも凄い。
オーケストラのヴァイオリニストが使っているボウ(弓)の反り方が、現代のものと逆なのも音楽史的な時代考証の緻密さをうかがわせる。バロックボウとモダンボウの中間の時期にあたっていることを教わった。
監督は(なんと)ブラームスの末裔だという。
ということは、子だくさんだったシューマンの末裔もいらっしゃるんでしょうね、きっと。
この映画には描かれていないが、クララとブラームスは膨大な量の手紙のやりとりがあった。
クララの夫でブラームスにとっては師匠であり、大の恩人であもあるシューマンへの配慮からブラームスは「手紙は焼きましょう」と提案し、クララも同意する。
ブラームスは約束をちゃんと守ったが、クララは実は焼かなかった。いつの世でも女性というのはそういうものだ。
後年、その手紙が発見され、そのおかげでブラームスならびにシューマンの研究が進んだという。
ディテールはよく描けているが、恋愛映画としても音楽映画としても平凡な作品だと思う。
クララを中心とした恋愛映画
★★★☆☆
ついついシューマンを中心に観がちの自分を抑えたレビューです。
シューマンやクララの芸術家としてのあり方、作品や背景より
当然主役はタイトルどおりクララなのだから
なるほど こういう映画なのだなと納得です。
内容は端的に言うと
●”恋愛”で”才能”で 嫉妬に苦悩する男たち
(シューマン、ブラームス)、
●シューマンへの義理はきちんと感じ クララを深く愛しているからこそ際まで行かなかった
最終的にはやはり硬派男? ブラームス
現実の生活に困窮し苦悩するが
やはり夫 ロベルトの才能を深く尊敬、愛する奥方クララという面は
良く現れていていました。
しかし下3つ 特にシューマンの自殺未遂背景は どうにも引っかかったんですが
これが史実に最も忠実というのならそうなんだろう。。。
そういうものとして観れば まぁいいかなとも思います。
”映画”なのだから
■ブラームスのやってきた当初、ちょいとチャラ男風で積極的で
髪型は肖像画にあるワンレングスじゃなかった
(無知なので ワンレングスは私の思い込みか)
■とにかく来たころのブラームスが積極的で これがリストなら納得(笑)
確かに映画としての表現力は弱いかもしれないが、ぼくは観ていて大変参考になった
★★★★★
映画は2008年リリース。売りは、監督のヘルマ・サンダース=ブラームスが、ヨハネス・ブラームスの叔父から連なる末裔にあたるということか。現在把握できる史実に極めて近い作りになっていると思える(史実の検証に12年を費やしたようだ)。そこにまずこの作品の『価値』を感じる。
ブラームスという才能が現在にまで伝わっているという事実には、クララ・シューマンという存在、そしてロベルト・シューマンの『批評家』としての存在がいかに重要であったかを感じずにはいられない。そして自身を知らしめてくれたブラームスがいかに二人の存在を大切に思っていたかを感じずにはいられない。
ロベルト・シューマンは非常に好き嫌いがはっきりしていたことは有名で、以下のように分類できる。
好き→最も有名なのはショパン。そしてブラームス、メンデルスゾーン、ベルリオーズ、シューベルト
キライ→ワーグナー、ブルックナー(特に酷く言っている)、ロッシーニ、そしてアルカン
一言で言えば、アルカンなどシューマンのおかげでマルカンドレ・アムランが再認識させてくれるまでホントに割を食った最たる人物だろう。
確かに映画としての表現力は弱いかもしれないが、ぼくは観ていて大変参考になった。