さくら書房
★★★★★
’81年から四年間休筆し浄土真宗本願寺派の龍谷大学にて仏教を学んだ五木寛之さん。その後のご活躍はご存知の通りですが、ようやく『親鸞(上下巻)』を書いてくださってうれしいです。しばらく説法的な随筆が多かったけれど、やはり五木さんの小説が読みたかった。本書にも著者の仏教観は十分に表れていますし、示唆も多く、ドラマティックな展開がそのまま映画にもなりそうだから、どんどん読み進めてしまいます。上巻は、親鸞が比叡山に入り、紆余曲折を経てお山を降り市井の聖(ひじり)となるまでのいきさつを描いています。ひょっとすると、五木さんは故・立松和平さんの『道元禅師』に触発されてこれを書いたのかな?と勝手な想像をしているのだけど、遅かれ早かれ五木さんが親鸞を描くだろうことは、ファンならずとも期待していたことではないでしょうか。