中心となるのは、やはり、当時ラジオから幾度となく流れてきた「ランナウェイ」かもしれませんが、ほかの収録曲も引けを取らない名曲ばかり。オープニングから続くメドレーのほか、まるで深く荘厳な森を表現したようなインストゥルメンタル「8. ミンストレル・ボーイ」から、力強いポップス調のインストゥルメンタル「9. トス・ザ・フェザーズ」を経て、ヴォーカル曲「10. ラヴ・トゥ・ラヴ・ユー」へと流れていくメドレーや、バックに流れるピアノが印象的な「13. クローサー」なども秀逸です。
なによりも、曲を単に寄せ集めただけのアルバムにせず、ノスタルジックな弦の響きが美しいインストゥルメンタルにはじまり、いくつもの曲を巧みにつなぎながら一気に「エリン・ショアー」(あるいは、ボーナス・トラックの「サムバディ・エルス・ボーイフレンド」)まで聞かせてしまう、アルバムとしての完成度が素晴らしいです。どの一曲を取っても、いわゆる「捨て曲」といえるようなものはありません。
ともすれば、単なるポップスになってしまうか、あるいは、伝統音楽を妙にアレンジした中途半端な(伝統音楽の側からもポップスの側からも嫌われてしまうような)音楽になってしまうようなところ、あくまでもポップスだけれども、その根底にあるのはアイリッシュである、というような深みのある音楽に仕上げた、名盤です。
インストナンバーなど盛りだくさんです。