シーズン2の『マイアミ・バイス』はヒップとクールの境界線を颯爽と歩いている。ヒップはいつか廃れるが、クールは時を越える。今となってはこの斬新で流行の発信源だったシリーズは、自嘲的なある登場人物の言葉を借りると“冒険の毎日、エキサイティングな連中、そしてエキゾティックなロケーション”を、さほど約束するものではない。だが、真に迫るストーリー、映像の修飾、主演のドン・ジョンソンとフィリップ・マイケル・トーマスの打てば響くような会話が『マイアミ・バイス』をタイムカプセルの中からすくい上げている。また同様に、80年代に全盛だったエレクトリックなサウンドトラックは、今では痛ましいほど古びているかもしれないが、ジャンルとメインストリーム、オルタナティヴ、世界の有名アーティストたちが入り乱れた豪華な音には違いない。本シーズンの幕開けとなる2コマ枠の「マンハッタン大銃撃戦!摩天楼を駆けぬけるフロリダの熱い風」では、グレン・フライ、U2、ネヴィル・ブラザーズ、デビー・ハリー、ブライアン・フェリー、ルー・リード、トラフィック、フィル・コリンズらの曲が使われている。コリンズはこのシーズンのもっとも面白いエピソード「だましのテクニック!汚れた大金を狙え!!」で、詐欺師を演じてもいる。通常ならばテレビ出演を控えるミュージシャンたちが、曲を提供するだけでは満足せずに登場している点が本シーズンの『マイアム・バイス』の特徴でもある。出演したミュージシャンには、キッスのフロントマン、ジーン・シモンズ(「マンハッタン大銃撃戦!摩天楼を駆け抜けるフロリダの熱い風」)、マイルス・デイヴィス(「愛欲のスキャンダルを撃て!!」)、レナード・コーエン(「妖艶!美人捜査官の疑惑 超A級テロリストを撃て!!」)、テッド・ニュージェント(「真夏のセクシーレディ!灼けた肌にひそむ魔性の罠」)、フランク・ザッパ(「謎の美女からの危険なメッセージ!消えた300万ドル!!」)がいる。『マイアミ・バイス』は性格俳優のオアシスとしてただちに地位を確立し、そうした俳優たちがキャリアの初期に顔を見せている。シーズン2では、ネイサン・レイン (「極秘文書奪回!若妻を狙う殺し屋の銃口」)、悪役としてハーヴェイ・ファイアスティンと『となりのサインフェルド』出演前のマイケル・リチャーズ(「腐敗の法廷!追いつめられた判事 最後の決断!!」、デヴィッド・ストラザーン (「フロリダ沖大銃撃戦!引退刑事の執念」)、ボブ・バラバン(「ベトナム・コネクション!地獄の戦場から甦った白い悪夢」)、ジョン・レグイザモ (「終りなき血の報復 全面戦争!バイス対カルデロン一家」、このエピソードでは銃を運ぶ公園保護管としてリー・アイアコッカの不運な脇役も見ることができる)。
『マイアミ・バイス』の最高のエピソードの多くは、シーズン1に含まれているが、このシーズン2もシリーズの水準をクリアしたエピソードがいくつか含まれている。ジョンソンが最高の活躍を見せ、監督も手がけた「ベトナム・コネクション!地獄の戦場から甦った白い悪夢」と「極秘文書奪回!若妻を狙う殺し屋の銃口」の2本は、クロケットのベトナム体験を探るエピソードだ。トーマスの見せ場は「マンハッタン大銃撃戦!摩天楼を駆け抜けるフロリダの熱い風」と「終りなき血の報復 全面戦争!バイス対カルデロン一家」で、タブスが復讐に燃えるカルデロンのターゲットとなる。「二重スパイ抹殺指令!暗躍・フロリダ国際諜報戦!!」は、エミー賞を獲得したキャステロ役エドワード・ジェイムズ・オルロスのショーケースとして歓迎すべき1本で、仲間のソビエト人の妻子をCIAとKBGから守る内容。「フロリダ沖大銃撃戦!引退刑事の執念」では、ゲスト出演のブルース・マッギル(『アニマル・ハウス』のDデイ)がちょっとはずれた元風俗課警官役で登場、エミー賞に匹敵する演技がみものだ。『マイアミ・バイス』はテレビの刑事ドラマの伝統をスタイリッシュに覆している。打ちのめされたクロケットにこだわった陰気なエンディングがあまりにも多いとはいえ、また見ようと思わせる陽気さは健在だ。この3枚組のセットに特典映像はないが、本編だけでも、1985年のパーティ気分を思いだすには充分だ。(Donald Liebenson, Amazon.com)