呼び水としての共著
★★★★☆
本著の構成は、兵頭氏による書下ろしパートと太田氏の主宰するコラム(メルマガ)
で過去に発表されたパートの混合体である。
太田氏のパートは、兵頭氏サイドで編集・リタッチされたものを太田氏がさいごに補訂
したものであり、またテーマの選択には太田氏自身は関与していない。
(最終段階で、出版サイドの都合で見送られてしまったテーマがあったようである。
興味のある方は太田氏のコラムから探してみるとよいだろう。掲載されなかったのが至極残念だ)
日本はみずから望んで米国の属国になっているという太田氏の「属国論」が最初に来ており、
個人的には、これがまず本著を貫く共通基盤なのだろうと認識した。
内容は
太田パートはその後、政権交代の重要性・米国によるカナダ併呑・民主主義インド・イスラム圏世俗化の可能性・移民大量受け入れの効用・北方領土返還要求は無理筋、兵頭パートは核武装「後」日本・米ケネディ政権と日本核武装・対China(支)戦略・敗戦後日本の軍事出版史〜という流れ
となっている。
自前の諜報機関もスパイ防止法さえ皆無の、属国状態の日本が警戒すべきは、移民の取り扱い
と思われる。買弁勢力が跳梁し、一面的な見方しかしない既存マスコミがミスリードする
中ではまともな議論は尽くされぬだろう。この共著でも両著者から異なる問題提起がされる。
太田氏は英国を例に挙げ、移民は常に英国の文化と経済の活力源となっており、
日本も単純労働者の受け入れは行わない方針は堅持しつつ、専門的・技術的な在留資格拡大
を図って外国人労働者の大量受け入れを増やすべき、としている。
(ちなみに太田氏は、イスラム教徒について興味深い評価をしているが、中共・朝鮮・台湾系
にはそうした障害はないとお考えのようだ)
いっぽう兵頭氏は日本への移民では中共・半島系が大多数になると想定しているのだろう。
人民解放軍の正面装備などより、移民そのものの内部浸透力や彼等の持つ資質こそが脅威であると、
論じている。中共については通常兵器は論じるに足らぬ、核が問題と以前から仰っていたが、
核プラス、その文化的ソフトパワーこそが脅威であるとその精度は最近増している。
日本は米国の属国なのだ、それは是正せねばならぬという現状認識が国民に浸透しなければ
絶対平和主義という怠惰は死に至る病となるだろう。