Mad Dogs & Englishmen
価格: ¥1,418
ロックンロールの巡回公演はあまりヒットしたことがない。ジョー・コッカーのMad Dogs & Englishmen(マッド・ドッグス&イングリッシュメン)の公演がツアーに出る連中にどんなふうにしてそれを実現したかを教えてくれていることを思えば、それは驚くべきことである。1970年春にニューヨークのフィルモア・イーストでライヴ録音されたこのCDが(同名のフィルム同様)記録しているのは派手でずさんなショー(すべてが2か月あまりの間に着想され、組織され、放棄された)だが、大仰でずうずうしいロック魂にあふれていた。フロントマンでバンドの中心を務めるのがジョー・コッカー。体を震わせて熱唱するカリスマ的なブリティッシュソウル・シャウターだ。バンドリーダーのレオン・ラッセルは、これまでに録音された中では最高の部類に入るロック・ピアノを弾いている。そして、一流のゲスト(21人のシンガーとプレーヤーが売り物だ)に後のローリング・ストーンズのホーンセクションと後のデレク・アンド・ドミノスのリズムセクションをフィーチャー。コッカーは、「Cry Me a River」(邦題「クライ・ミー・ア・リヴァー」)、「Give Peace a Chance」(邦題「ギヴ・ピース・ア・チャンス」)、「The Letter」(邦題「あの娘のレター」)ほか多くのカバー曲でラッセルとクリス・ステイントンの急ごしらえの激しいアレンジの恩恵を大いに受けて輝いている。これはウッドストック時代にとってのレイ・チャールズのレビューと言えるかもしれない。しかし、愕然とするほど天才自身これをしのぐレコードはそう多くは残していない。(Steven Stolder, Amazon.com)