物語は、近所の人々から「おろく医者」と呼ばれている奉行所の検屍役・美馬正哲が、死体の痕跡から犯人を割り出していくというちょっとユニークな捕物帖。
「おろく」とは「南無阿弥陀仏」の六文字に由来するもので死人の意。図体がでかくて容貌魁偉な正哲と、一回り年下で細っこい体で産婆の女房お杏。人の生と死に立ち向かう対照的な夫婦が難事件を解き明かしていく。
人情味あふれる江戸の群像とその風景を、手がたい語り口調で描きながらも、男性作家にはない、男と女の息づかいや、女の苛立たしい横顔、寂しさが伝わってくる。
夫が人の“死”に立ち合う検死官、妻は“生”に立ち合う産婆いう対照的な設定は見事である。
内容としたら宇江佐さんの作品の中では最もミステリー色が強い作品となっている。
あと、夫婦小説としても楽しく読むことが出来る。
全4編からなるが2編目の「おろく早見帖」が1番の出来かな。
主人公の美馬正哲が麻酔手術勉強の為に紀伊の国に旅立ってるあいだに妻のお杏が代わりを勤めるシーンがいじらしくかつ微笑ましく感じられァ?。
お互いを思いやってるシーンが随所に散りばめられて、現代物では味わえないような心地よさがある作品といえるでしょう。
こういう2人を理想の夫婦っていうんでしょうね。
生死に関わる仕事をしてるにもかかわらず、子種に恵まれなかった二人の最後はどうなるのでしょうかね、読んでのお楽しみです(笑)