農民の子から軍配者へ‥謙虚なヒーロー小太郎の魅力に惹かれます。
★★★★★
久しぶりに読み終えてしまうのが惜しい本に出会いました。
読売新聞の書評でも気になっていたのですが思った通り★五つをあげる小説です。
小太郎という,りりしく賢く心優しい農民の子が,韮山さま(後の北条早雲)に見出され、
千代丸(後の北条新九郎氏康)の軍配者(戦全般を司る専門家)になるべく
足利学校へ入学していきます。御年十四歳で。
小太郎の濁りのない澄んだ目とこころ、
難解な学問で脱落者も多い足利学校で、わずか十八歳で教授にならないかと
推挙されるほどの叡智。読者は彼の魅力に引き込まれていくでしょう。
特に「高輪の戦い」。まだ軍配者見習いの身である小太郎が与えた助言は
北条軍の窮地を救っていきます。その合戦の行方には目を離せませんでした。
戦に勝つこと,敗北すること‥すべて軍配者の腕しだいなのですね。
小太郎を見出した韮山さま(北条早雲)のなんと徳のあるお人柄か!
早雲の領地の治め方は農民たちにとってなんと寛大なことか!
何が何でも戦に勝つのではなく、兵も民も最も傷を少なくして,戦わずして勝つ、
という戦の極意を知っている早雲と、それを受け継ぐ小太郎に
平和の光を見出します。爽快な読後感の歴史時代小説です。
表紙の絵の小太郎のりりしい合戦の姿にもご注目を。