TR1AD時代に製作されたミュージック・クリップをリリース順に並べたコンプリートPVコレクション。アートワークのセンスの良さについてはいまさら説明するまでもなく、どの作品も時代を超えた魅力を放っているわけだが、ミッシェル・ガン・エレファントという不世出のロックンロールバンドを時系列に追体験できる本作を見て興味をひかれるのは、メンバーの風貌がどんどん変わっていくところだ。
 「世界の終わり」「ブラック・タンバリン」の頃は“ガレージとモッズを愛する青年たち”といった雰囲気なのだが、曲を追うごとに凄味を増していき、「アウト・ブルーズ」「スモーキン・ビリー」では何かに取り憑かれたような暴力性を帯びている。さらに「暴かれた世界」「ゴッド・ジャズ・タイム」あたりになると形容詞しがたい疲労感に包み込まれていく…。ロックンロールというクラシカルな方法論で、90年代後半から00年代にかけての退屈と閉鎖感を完全に燃やし尽くしたミッシェル。それがどんなに厳しいことだったかを、本作は如実に伝えている。（森 朋之）