キャラ設定が絶妙。
★★★★★
骨董をテーマにしたミステリーの、連作短編集。
著者の同じ骨董を扱った「冬狐堂」シリーズと比べて、骨董業界の殺伐とした世界を描きながらもどこか暖かい感じを受ける。
だから全体の雰囲気としては「冬狐堂」シリーズと「香菜里屋」シリーズの中間ぐらいと言えるかもしれない。
本書の登場人物には、極端に善人とか、極端に悪人とか、そういう人物がほとんどでてこない。
悪役として出てくる登場人物も、どこか渋いところがあったりするし、主人公からして完全な善人ではない。
そういったところがリアルで、それぞれのキャラクターを魅力的することになり、ひいては物語全体の面白さにつながる。
解説はハイデガー研究者であり、大のミステリー好きでもある木田元で、北森鴻へのハマりっぷりが書かれていて面白い。
是非続編を出して欲しいと思う。
ぜひ続編を!
★★★★★
骨董を扱う雅蘭堂はいつも開店休業状態。店主の越名集治はそれなりの目利きであるにもかかわらず、商売があまりうまくないようである。店で万引きをしようとした押し掛けアルバイターの安積をクビにできない人のよさのせいでしょうか。
同じ骨董を扱った作品の冬狐堂シリーズとはまた少しおもむきの違う作品です。骨董とはいっても美術品ではなく古民具などを扱っているせいで、敷居が低い感じがします。でもそこは、やはり一般の商売とは違った特殊な世界。人がいいだけではやっていけません。犬塚という骨董商との息の詰まるような駆け引きもおもしろいし、骨董に関するうんちくも勉強になります。彼が扱っているのは博物館に飾られるような高級なものではないけれど、それだけにもとの持ち主の思い入れなどもあって、”生きたもの”を扱っているような気がします。
それらの品々を巡って起こる事件を解決していくのですが、香菜里屋シリーズのような暖かみのある作品です。商売はへたかもしれないけれど、店が潰れてないということはそれなりに収支が合っているわけで、それはやはり店主の人徳なんじゃないかなあと思わせる作品です。
ぜひぜひシリーズ化して、ずっと続けていってもらいたいと思います。
骨董詐欺
★★★★☆
2001年に出た単行本の文庫化。
越名集治の経営する骨董店「雅蘭堂」を舞台にした短編集。8編が収められている。普通のミステリとはちょっと違い、骨董業界にまつわる詐欺・だましあいをテーマとした作品ばかり。素晴らしい骨董品と汚い人間の思惑がからみあうように描かれており、小説としての読み応えもなかなか。蘊蓄も楽しめる。
巧妙な詐欺の手口、それを暴いていく越名のひらめきは魅力的。ただ、あまりにも殺伐とした世界なので読んでいて陰鬱になる。バイトの女の子とのからみで軽くしようとしているが、かえってその部分が浮いてしまっているほど。
緊張感のある一冊だった。
絶妙の短編集に謎の大ポカ
★★★★★
骨董店主とアルバイト女子高生のコンビが遭遇する事件を綴った連作短編集。270頁で8篇収録だから、昨今のミステリ短編集としては1篇が短めなのだが、中身が濃く読みでがある。折り返し地点で、ああ、こういうのを後4つも読めるのか!と感動してしまうぐらいである。といってもタッチはあくまで明朗でユーモラス、主人公に妙な陰がないところもいい。女詐欺師などのサブレギュラーも魅力的。骨董ネタだけにペダントリーも豊富で、おいしいところだらけの短編集だ。こういう手間ひまたっぷりかかった短編集には一人でも多くの読者がつくことで報いてあげてほしい。
ところで、最後の「人形転生」の昭和七年の事件の記述はどこをどう勘違いしたのか、あからさまにヘンである。(ミツコはいったい歳いくつなんだ?)修正可能な矛盾なので本書の価値を減じるとは思わないが、この人ほどの名手がなぜ?という点、雑誌から文庫本に至る編集者・校正者、雑誌・初刊本の読者の目をかいくぐってきた点、最大の謎というほかない。
明るい骨董ミステリ
★★★★☆
表紙の杉田さんのイラストにひかれて購入。
内容もそのイメージを裏切らない楽しさでした。
骨董のうんちくやそれをふまえた謎解き,加えて,おしかけアルバイター女子高生とのやりとりがすごくおもしろかったです。
読後感もさわやか。
続編があったらぜひ読みたいです。