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桜宵 (講談社文庫)

価格: ¥560
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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シリーズ中でも異色なので…… ★★☆☆☆
 北森さんの連作小説には、連杖那智シリーズ、冬狐堂シリーズ、裏京都ミステリー、それに
香菜里屋シリーズなどがあります。
 ごく大雑把には、那智は冷たくて暗い、冬狐堂はやや重くて暗い、裏京都ミステリーはかなり
べたべたにコミカルなシリーズで、香菜里屋はほんのりと暖かいという感じです。

 『桜宵』は香菜里屋シリーズの一つですが、同じシリーズの他の本と違って、かなりテイスト
が異なります。はっきり言って、後味の悪い話がいくつか入っています。特に最後がそうで、ど
うしてこれをラストに持って来たか不思議です。このシリーズの話でなければ、話として成り立
つとは思いますが、正直言って、どん引きしました。

 実際、このシリーズの探偵役の工藤は雰囲気のいいバーの店主で、商売柄も人柄も人当たりの
よい、いつも静かに微笑んでいる人ですが、シリーズ中で珍しいことに、強い怒りを表すことに
なっています。

 北森さんは、同じテイストが続くことを避けたのか、シリーズ中にテイストの違う短編をは
さむこともありますし、このシリーズを読み始めたら、他の本を読みたくなるとは思いますが、
ちょっと注意した方がいいかもしれません。
こんなお店があったなら!! ★★★☆☆
収録された5編、どの話もしっとりとした味わいがある。一番印象に残ったのは
表題作の「桜宵」だ。口に出せない妻の夫への思いに切なさを感じた。妻の死後に
初めてその思いを知った夫の心情も細やかに描かれていてよかった。
香菜里屋は魅力的なお店だ。マスター工藤の、でしゃばり過ぎない控えめな人柄にも
好感が持てる。謎解きの面白さ、そして独創的な数々の料理。読んでいて、同時に
二つを味わえる。「本当にこんなお店があったなら!」と、思わずにはいられない。
メニューリストが見たい ★★★★☆
みんながおすすめを食べるから、どんなメニューがあるのか分からないままだ。それでも不満にならないのは、提供される料理がおいしそうに表現されているからだ。
料理を通して解決される事件たち。一つ一つにスパイスがきいている。
「香菜里屋」シリーズ第二弾 ★★★★★
三軒茶屋の奥まったところにあるビヤ・バー「香菜里屋」。
アルコール度数の違うビール四種と
読むだけで涎が出そうな創作料理が大きな魅力。
そこのマスター工藤が安楽椅子探偵となって
「日常の謎」を解いていく連作短編シリーズ第二弾。

謎解きはやや強引で、テクニックに走りがちとは云える。
しかしスタイリッシュながら、表題作『桜宵』を皮切りに
「語られなかった情念」といった、日本人の琴線に触れる短編が秀逸。
なにより工藤をはじめ、登場人物たちの人間としての陰影が
謎解きに華を添える上品な一面を持ち合わせている。
また嫌な話 ★★★☆☆
 2003年に出た単行本の文庫化。
 香菜里屋シリーズの第2弾。5つの短編が収められている。
 相変わらず、嫌な話が多い。人間の悪意を描くのに、これほどスタイリッシュな作家も珍しい。物語としての魅力はあるのだが、いつも、読み始めるのにためらってしまう。
 トリック、ミステリの面はいまいち。そういうのを期待しても駄目だ。
 料理は美味しそう。再現してみたくなるが、難しそうだ。