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まほろ市の殺人 夏―夏に散る花 (祥伝社文庫)

価格: ¥400
カテゴリ: 文庫
ブランド: 祥伝社
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切ない ★★★★☆
まほろ市、という架空の都市を舞台に四人の作家さんが競作する、という企画の夏バージョン。

するするっと読めて、まあおもしろかったです。
登場人物が出揃った時点でなんとなく「こういうことかな」というタネはわかってしまいますが、それでも読みやすさとテンポのよさで退屈せずに読めました。
ただ、小山田の行動や、肝心のみずきの秘密は多少釈然としないものが。
中篇で書くとどうしてもこんな風になるのかな。

あと、クライマックスでのみずきの行動は印象的で切なかったです。
切ないやりきれなさが残る作品でした。
夏の恋 ★★☆☆☆
 『幻想都市の四季』の第二篇。ほかの3冊は、倉知淳『春 無節操な死人』、摩耶雄嵩『秋 闇雲A子と憂鬱刑事』、有栖川有栖『冬 蜃気楼に手を振る』。ただし、舞台を同じにするという縛りをかけただけの競作なので、春から読む必要はない。一冊だけでも楽しめる。しかも、各冊とも中編一本で一冊にしたもので、かなり簡単に読めてしまう。本書もわずか122ページ。
 夏ということで、海とか恋とか出てくる。トリックそのものはもうひとつだが、そのトリックから派生する動機は素晴らしい。この殺人はやむをえないだろうと思う。
 著書をベストセラーにするための方法も示されていて、参考になる。
歪んだ純愛が生んだ悲劇。 ★★★★☆
 我孫子武丸という人は、いびつな人間心理、そしてそれを‘闇’にしてしまう社会の歪みを描くのが非常に上手い。
 この作品も、そういう歪みが生んだ悲劇を描いている。
 最初は、純粋な想いだった。ところが、その想いに水を差さないための小さな嘘が、後に、大きな悲劇に繋がってしまう。
 この社会は、‘異形’のものを受け入れない。‘異形’の宿命を背負ってしまったものは、その瞬間から、社会の‘闇’になってしまうのだ。
 事件の真相は、ちょっとにわかには理解しがたい。事件そのものも、異形だからだ。
 そんなことあり得るのか、という疑問も浮かぶ。でも、あり得るとしたら、こんな哀しい事件もない。
 短い作品だけど、読み応えはけっこうある。読後感は、とっても切ない。「まほろ市」シリーズの中では、いちばんの傑作じゃないかな。
ちょっとした行動と好奇心が、悲しい事件を呼ぶ… ★★★★☆
自分としては大した事ではなくても相手にとって大きな影響を
与えてしまったこと。

そんなつもりではないと否定しても既に遅すぎたこと。

この小説はそれらの要素が一気に回転してゆき
あっという間に終わる。

登場人物は悪意があったわけではないのに人を騙すことになった。

ミステリと一概には括れない作品だと思いました。

ミステリをあまり知らないけれどこの作者の本を読みたい方もどうぞ。

お手軽ですよー ★★★★☆
 短編ですが、その分すっきりとまとまっていてサッと読み通せました。「まほろ市」である意味は薄いけれど、夏らしいすがすがしい読後感を得られると思います。

 本格ミステリー小説系作家であり「かまいたちの夜」原作で著名な我孫子氏ですが、恋愛小説的な雰囲気が少し含まれていて(主ではありませんけれど)異色な作品かもしれません。

 しかしもちろんミステリー要素も忘れてはおらず、終盤の、謎が氷解し二転三転する展開は素晴らしいです。鮮やかでした。