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姜尚中の政治学入門 (集英社新書)

価格: ¥693
カテゴリ: 新書
ブランド: 集英社
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説明がヘタ ★★☆☆☆

内容は、「何を書いているか全く分からない」部分と「分かりやすい」部分とに極端に分かれる。
どうやら、歴史的、社会的事実を記載している所は分かりやすく、概念や用語の説明になると全く分からなくなるようだ。

意味不明な文章の例をあげたい。

「もう一つ重要な点は、その歴史相対主義のなかから、さらにその「鬼子」のような歴史観が出てきたことです。すなわち、史料や事実関係のような客観的な材料をもとに歴史を捉えようとしても、厳密には検証が不可能です。それよりもまず、誰が何のために歴史を必要とし、どういう意図をもって修正しようとしているのか、という問いを打ち立てる。例えば、ドイツ国民がナチス・ドイツの歴史について再検証することに、どのような意味があるのか、等々。
 こうした立場を、歴史修正主義と呼んでおきましょう。」(P.123-124)

この文書では、「誰が何のために歴史を修正しようしているのかを問う立場」が「歴史修正主義」であると理解できる。一般に言われている「歴史修正主義」とは異なる意味合いである。しかし、この後の文章を読んでみると、著者は「歴史修正主義」を一般と同じに「意図的に歴史を修正しようとする立場」として使用していることが分かるのである。
もし、「歴史修正主義」という言葉を知っていたのなら、この「文章がおかしい」と言うことに気づくことができるが、知らなければ混乱して訳が分からないまま終了であろう。

当該著書は、このような文章が蔓延している本である。政治学の入門書として読もうと思うなら100%やめておいた方がいい。
体系的な政治学の入門とは言えないかもしれない ★★★☆☆
普通、政治学の入門書や教科書と言えば扱われるテーマやその順番は大体決まっている。例えば佐々木毅氏の『政治学講義』では「人間・政治・権力・政治システム・正統性・リーダー・公共・民主主義・政党・官僚制・利益集団・政治経済体制…」といった具合で、その他の教科書や概説書でも大体「権力・リーダー・イデオロギー・政治意識・デモクラシー・議会政治・政治制度・政党・選挙・投票・圧力団体・官僚制・国家・日本の政治・国際政治」みたいな具合。しかし本書の目次は「アメリカ・暴力・主権・憲法・戦後民主主義・歴史認識・東北アジア」といった具合で、一目でそういった体系的な政治学の本のような内容とは違っている事が分かる。

これを長所と見るか短所と見るかは読者によるだろう。これを踏まえて読む分にはいいが、体系的な政治学への入門を目的にしたり、そういった記述を期待している場合には全く不向きと言える。扱われるテーマはかなりの程度著者の関心分野に偏っているし薄さと平易さが全体的な浅さも感じさせる。私は著者の立場や思想が正しいとか間違っているといった事についてはあまり思う所はないが、とりあえずこういった欠点がありうるかと思う。

テーマとしては普通の政治学のそれより身近でより具体的なものが選ばれているような印象も受ける。抽象的なテーマがお硬く語られるよりもアメリカや改憲問題や歴史認識といった、少し政治に関心を持っている一般人なら馴染みのある話題、あるいは日本で話題になりやすい問題から柔らかく語られている。その方が助かるという場合もあるだろうが私などは初めて読んだ際、体系的な政治学の説明を期待していた事もあって拍子抜けした覚えがある。確かに色々な政治学者が引用されるという点などからは政治学とも言えるのだがどっちかといえば「政治」入門とでも称した方がしっくりくる気がする。

後書きで著者は政治の真実を見抜くための第六感を磨けと提言している。未だに巧妙なプロパガンダや情報操作は存在しており一般人はしばしば正しい情報を与えられない。論より証拠の証拠が得られず、あたかも大量破壊兵器があるに違いないと思い込む方向へいくしかなくなるような映像や情報を与えられ、イラクへの先制攻撃支持などに操作されてしまう。著者が想定しているのはこのような事である。これを回避するには最終的には第六感に頼るしかないそうで、自分は第六感から大量破壊兵器が存在しない事を確信していたそうである。だが第六感とは感情的なものであり、合理性や論理性とは無縁にすら思える。また小泉元首相などは自分の第六感から大量破壊兵器はあるだろうと判断しアメリカに協力した。つまり著者の言う第六感はなんら一つの結論を導出するわけではなく、真逆の結論すら導出しうる。この問題に対する著者の答えは「歴史を学べ」というものだ。広い歴史的見地から歴史を踏まえ歴史に立脚し過去にどんな過ちがあったか、過去にどんな騙し方があったか、過去のどんな事がどんな顛末を生んだかといった事を知っていれば第六感はより優れた判断をもたらすものになる。著者のこの歴史重視の考え方は多分に保守主義的であると思う。しばしば左翼に分類される著者なりに右翼思想の長所を取り入れた結果と言えるかもしれない。
リアリズム ★★★★☆
入門とはいえ、中身がやや薄い。
しかし、著者の経験、思考方法のエッセンスが見える。基礎的参考文献の紹介も役に立つ。
リアリズムとしての、平和、反戦、対話の有効性をアピール。それは、近年、左翼とみなされがちな著者の抵抗でもあろう。著者は左翼イデオロギストではなくリアリストなのだ。

政治学 ★☆☆☆☆
 著者は冒頭で現在の日本には構想力が枯渇し人々が砂のようにバラバラになっていると述べる、
そして軸足を東アジアあるいは東北アジアにおく物語はありえるのかと説く。
 既に刊行された東北アジア共同体論でも述べられているように「これから中国は最もと民主主義らしい国になる可能性があるのです。」と述べている。
 その点からいえば
目指すべき国 中国
その前段階 北朝鮮、イラク
バラバラな国 日本、アメリカ、イギリス
という著者の政治学的視点が理解できよう。
 多くの政治学者の紹介ともなっており
ヴェーバー、鈴木、トクヴィル、丸山眞男、ホッブズ、アレント、姜尚中、イェーリングなどの偉大な政治学者たちを知ることもできる。
 そして最後に「第六感」を磨けと若い人たちに訴えかける。これは重要な指摘であろう。
なお執筆年である2006年に気づいたこととして次のことを述べている。名前をあげていない恩師だという藤原保信に関して、ブッシュ政権でネオコンが話題になったとあるが、
実際は95年からジャーナリスティックな世界では話題になっており、日本アカデミズムで話題になったのはブッシュ政権からではなく、
9・11からだといえよう。
 そしてテレビで刷り込まれたものとして、毒ガスで苦しむクルド人の姿をあげ刷り込みで或ることを強調している。これは世界でも唯一の指摘であるといえよう。
 実際数年前、東京大学から出版されているUP誌ではイラクだけでなくトルコでも虐殺されるクルド人論が連載されていた。
著者も述べるようにこのようなメディアの問題がイラク戦争を惹き起こしたりトルコのEU加入を疎外しているのであろう。
本書は様々な切り口から言って新たな思想の誕生をつげる書物であるともいえようか。
「干物」と「生もの」のリンク ★★★★☆
アメリカ、暴力、主権、憲法、戦後民主主義、歴史認識、東北アジアという
7つのキーワードを、政治学的視点から解題していく。

憲法の章は示唆的。筆者は日本は不完全国家であるという主張をしている。
それに対して憲法改正をして日本の完全国家化を志向する人々がいる。
しかし、憲法とは元来、国家の権力を抑制するためのものである。
筆者が警告しているように、不完全国家であることの意味を問わなければならないだろう。

文庫なので読みやすく、政治学の入門書としては手頃な感じ。
巻末に簡単な人物・用語解説が付いていて、政治学の知識を補ってくれる。

ただ、筆者の主張が強いため、「学問」の入門書としては扱いに注意が必要。
政治学の視点から考えたからといって、彼の主張と同じ結論が導かれるわけではない。
批判的に読める人ならば問題はない。

あとがきでも書いていたように、日本が現在抱えている問題など、
「生もの」が混じった構成となっている。
そのため、数年後には価値が薄れていくだろう。
読むならば、今、読むべき本だといえる。