ノリの良さと和風歌謡の魅力 うめ吉の魅力が満載 不思議なテイストに魅了されました
★★★★☆
三味線弾き語りの俗曲師のうめ吉さんが好きで、その和風お座敷歌唱とでもいうべき独特の発声に惹かれています。和風の特徴である喉声を効果的に生かしながら、微妙なこぶしも効かせてくれましており、粋なうめ吉姉さんの不思議な歌唱世界の虜になりました。
戦前・戦後の懐かしい流行り歌と、粋な着物姿の檜山うめ吉さんの取り合わせは話題になったことでしょう。クラブバージョンあり、ジャズ・テイストありと、雅な芸者世界とこの和風ラップが見事に調和します。マスコミの評判にならないのが不思議ですが・・・・。
うめ吉さんをあまりテレビで見かけませんが、彼女は年間500本の高座をこなす人気芸人です。ここで披露される端唄や俗曲や懐かしい流行歌は、見事に平成の世にカムバックしてリスナーに伝わってきます。彼女の功績でこれらの珍しい曲たちを知ったと言う人もきっとあるでしょうから。
1949年に笠置シヅ子によって歌われた「ホームラン・ブギ」はノリノリの歌唱です。バンドの音量が大きく可憐な声もかき消されそうですが、小唄風のこぶしですから不思議なことに埋没しません。
同じく笠置シヅ子のパワフルな歌唱との違いを聴かせる「買物ブギ」も楽しんで聴きました。ジャズと三味線による端唄風の歌唱が、服部良一のブギウギに彩りを添えています。私などはオリジナルの歌謡を知っていますが、若い世代は元歌を知らなくても新鮮な感覚で受け止めたことでしょう。
フランス語で歌われる「セ・シ・ボン」やフランソワーズ・アルディの名曲「さよならを教えて」の不思議な雰囲気にも参りました。耳がイイのでしょう。音程だけでなくフランス語の特徴を上手く捉えた雰囲気のある歌唱でした。
伝統的反則技
★★★★★
うめ吉さんのアルバムは数枚所有し、最近になって注目していましたが…。
このアルバムは何というか、万華鏡の様なカラフルさに包まれています。今どき流行りの3Dテレビなんて目じゃない位、うめ吉さんの存在感と音が耳に飛び込んできます。5chサラウンド?いや、もっと暴力的に心をサラウンドしてきます。
「雷ロック」のテケテケサウンドでは、スパイ映画に突如登場する「大和撫子」うめ吉、「ホームラン・ブギ」のブラスバンドで「かっとばせ〜かっとばせ〜!」の絶叫。祇園小唄で、お座敷に憧れる幼気な男子の心をくすぐったと思えば、「さよならを教えて」をフランス語で唄ったり…(イントロのバスドラがF.アルディ版よりもロックな音なのがまたステキ)
その後の都々逸で「初手は浮気で漕ぎ出す船も 風が変われば命がけ」なんてのは、いたずら過ぎてたまったもんじゃありません。それはこっちのセリフですってば。
奇をてらった企画盤ならばボロが出ようって内容ですが、そうならないのはきちんと「やることやってる」感があるからでしょうか。その上で遊びまくっているからタチが悪い、もうメロメロです。邦楽なのにロックでジャズで、ふと気が付けば三味線の音色にほっこりとしている自分に日本人のDNAを感じる、そんな不思議なアルバムです。ブリリアント。