見えないからこそ劇的
★★★★★
クサナギとしての視点で語られる作品としては2作目。
時間の経過と共に、周囲の環境も変化して、 前作に比べて空へ上ってゆく機会が格段に減り、否応無く地上での生活を強いられるコトになります。
と同時に様々なヒトがクサナギと関わりを持ちます。 空の上での表情と異なる、地上では大人びた対応を見せる、前作とは少しずつ違うクサナギ。
前作にも登場したカイが今作ではかなりの頻度でクサナギに絡んでくるのですが、彼女との会話からクサナギのまた違った面を見るコトが出来ます。
(個人的にカイは助演女優賞にノミネート(笑)したい!)
この作品はクサナギ自身が変わってゆく課程が描かれているんだと思います。 それは、ほんの少しずつ、でも、確実に。
周りの境遇の様に劇的にではないですが、見えない何かが静かに動き出してる。 そんな感じ。
逆に見えないからこそ劇的なのかもしれません。
作中にちゃんと描かれていて、ただ単に見過ごしているダケかもしれません。
はっきりとした形で無く、感覚で。でその感覚を確かめたくて、何度も読み返したくなる。この作品世界に共通してる何かが...
色んな意味であぶない作品かも(笑)
『スカイ・クロラ』シリーズ第三巻!
★★★★★
21世紀に蘇った『かもめのジョナサン』とも云えるのではないか。
SF的なキャラクター設定を採りながらも、
本シリーズの中身は、実は純文学である。
他人を痛いまでに希求する寂しさを
大空の透明な孤高で昇華する主人公たちに
私たちが果たせない孤独の処理を託してしまう、そんな物語だ。
本書は第三巻ではあるが、
時間軸的には第二巻にあたる。
シリーズを通した主人公、クサナギの
パイロット中期時代が描かれている。
今までに出てこなかった組織や社会といったファクターが
物語の中に色濃い影を落としてくる巻である。
その束縛は高空の空気の薄さよりも、息苦しい。
であるからこそ孤高の空の自由度が
簡潔、かつ的確な表現と相俟って
より強いカタルシスを生んでいる。
専門用語で綴られるスピード感
★★★☆☆
スカイクロラシリーズ3作目。
ここまできても明らかにされない詳細な世界観。
主人公「僕」の辿る空と地上の物語。
十八番の専門用語で綴られるスピード感は一段と増している。
空を飛ぶってどんな感じだろう・・・
★★★★★
この話で、「ナ・バ・テア」や「スカイ・クロラ」のように自由に空を飛べる事が難しくなっている。まるで、大人の契約に駄々をこねる子供のように、自分がしたいように出来ない、ならない世界に怒っている。
それでも、彼女は空を飛ぶ事を止めようとしない。
地上はどんなに汚れても、空だけは美しい場所だと知っているから。
だから彼女は美しく空を飛ぶ事を選ぶ。何者でもない、自分自身のために・・・
マンガのようなサラっとした読後感
★★★☆☆
森博嗣の作品は四季シリーズとスカイ・クロラシリーズを好んで読んでいます。この「ダウン・ツー・ヘヴン」は草薙水素(登場人物の名前は、なぜかみんな凝ったお水の源氏名風です)を主人公とする戦闘パイロットシリーズの第3弾となります。
いつの時代の何のための戦争?(ジェット機ではなくプロペラ機に乗っている)大人にならない不老不死の子供=キルドレって一体何?具体的説明が一切なく唐突に展開されるストーリーは森作品の特徴ですね。
だから話の成立自体がすでにミステリーとなっている気がします。
人間の生死に関する重たい内容でもあるのですが、ポエムのような短い文章の羅列(行数稼ぎ?)やまどろっこしい説明が無いおかげで、3時間ほどでサラッと読めてしまいます。
まるでマンガを読んでいるような後に何も残らない軽い読後感が森作品の魅力だと思います。