新しいまま古典になる理由
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「詩を書く」「詩を読む」「詩を考える」。。。世界でたった一人、詩を書くだけで生活している男、谷川俊太郎のほとんど自伝的な三部作。
どの項を読んでも呆れるほどモダンだ。「コンピュータで辞書をスキャン」なんて一節が現れて、「ああ、これは比較的に最近の。。。」と読み終えて執筆年を見れば1973年である。やれやれ、この人の禿げ頭がどれほどに未来を照らしていたことかと。
何よりも重要なのは、この国では詩人が職業にならないという積年の事実が変わらないことである。「素人詩人は幾らでもいるが」「社会的な関わりを持ち」「商品として送り出すことができない」と吐露される身上。絵画、ポップアート、写真、映像、音楽がアート「芸」として売れるのに詩が売れないのは社会の問題ではなく詩人の在り方の問題なのだと解いてくる。
この三部作は、少なくとも言葉を生業にする者はすべからく読んだほうがいい。賛同する否定するに関わらず、自らを世に送り出すに正すべき自らの姿勢を審らかにしてくれる。