食えば食えるふにゃふにゃくねくね系
★★★★★
日本国内でもこんなに知らない食材があったのかと驚かされます。釣りの餌としても一番嫌いだというものやら、外見が情けないものやら、編集者が椎名さんをぎゃふんと言わそうとして探しだしてきたに相違ないものが次々と。地元の人も最近は食べるという話を聞かないなあというものも含まれています。
そんな現地を訪れた椎名さんが地元の人たちと触れ合い、語りながら、それらのものを食する。ああ、読者であって良かったと心底から思いつつも、そんな風景が楽しめます。
第一回全日本麺の甲子園大会という対談紛いの章や名古屋の食を極める章も知見を広げる情報が一杯です。
軽く読める風物詩
★★★★☆
ゲテモノ系の食べ物を食べ歩くというエッセイ集で、雑誌の連載を元にしているようです。
食べ物に関する記述だけでなく、地元の様子や人々に関する描写も多く、紀行文としても読めると思います。
飾らない文体も好印象です。
これぞシーナさんの持ち味です。
★★★★★
これは珍食・奇食を追い求め、全国津々浦々を駆け巡るシーナさんの本領を発揮した本です。
こういった本は小泉武夫せんせとシーナさんだけでしょう。
いずれも共通点は、一見ゲテモノらしく怪しい雰囲気が漂いますが、それらを口に運べば心底おいしそうに食べるところです。
というよりは、本当においしいものなのだと思います。
読んでいるうちに、その滴り落ちる描写にその食べ物の香りが漂ってきて、ついヨダレが出てしまうことでしょう。
それと、珍食・奇食といっても、供給インフラの観点から、世の中に大量消費されるポピュラーな食べ物ではないというだけで、逆に言えばローカルでしか味わえないレアな価値ある食べ物なのですよね。
本書は、そういった食べ物を単に食す表現だけを書くだけにとどまらず、食すに至った文化的意義というものをきちんと調べてあり、文献ではないですが、まさしく図鑑といえるフレンドリーなものに仕上がっていると思います。
椎名パワー炸裂
★★★★☆
椎名さんの本にこんな面白い「下手物食い」の本が有るの知りませんでした。
椎名パワー炸裂状態で、「日本人的には下手物」的な物を食べていらっしゃいます。
しかし、この本にも書かれていますが「何が下手物で何が普通の食べ物か?」を改めて考えても
良いのかも知れませんね。
昔著者のファンで今はそうでない人(自分)が読んでも楽しめる作品
★★★★★
私が初めて読んだ著者の作品は「場外乱闘はこれからだ」という‘82年に出版されたエッセイである。この「ごく私的身の周りルポ」ともいえるエッセイを読んで“エッセイスト”椎名誠にはまった。
その後、処女作「さらば国分寺書店のオババ」などの過去の作品も「あやしい探検隊シリーズ」も次々と読んでいった…のだが、そのうち著者は小説を書き出し、エッセイも地球環境などの難しいことも織り込むようになる。更に、書き殴りとはいえないものの次々と新作が出版されるので、もういいやという気分になり徐々に彼の作品からは離れていった。
そして、気付くと著者の本で買うのは年に一冊出版される赤マントシリーズの単行本だけになっていた。それもなんだか惰性になっていて買ったものの読んでいない作品もある。
なので、’87年に発売され何度も読んだ『全日本食えばわかる図鑑』の続編ともいえるこの作品を買うかどうか迷ったのだが、買ってみるとこれがいい。なんだか初期作品に通じる訳のわからないパワーを感じる。あまり難しいことも言っていない。近年の著者のエッセイをよく読んでいないので他の作品がどうかなのかはわからないが、私にとっての椎名誠は“これ”である。
近年著者の作品から離れている過去にファンだった人も読んで損はない。