第5弾となる本書は、外国人マフィア間の抗争、ラブホテル連続放火、売春婦連続殺人という、同時期に発生した3つの事件を鮫島が追う設定である。巧みな場面転換と鬼気迫る犯人たちの心理描写が物語にスピード感と臨場感をもたらしており、シリーズの中でも特にエンターテイメント性に優れた作品であるといえよう。加えて、これまで単独で行動していた鮫島が、今回はチームを組んで捜査する点が新鮮である。相棒となるのは甲屋(かぶとや)という名の農水省植物防疫官で、彼は南米から持ち込まれた稲の害虫「フラメウス・プーパ(火の蛹)」の付着したワラ細工を探していた。その所有者が、鮫島の追うイラン人マフィアの情婦だったのだ。ほかにも、東京消防庁予防部・吾妻や新宿署鑑識係・藪ら、職人魂をもった魅力的な男たちが登場する。彼らのプロフェッショナルな仕事ぶりがつづられているからこそ、陰惨な事件を扱った刑事小説でありながら、爽快な読後感が得られるのであろう。(冷水修子)