良書です。
★★★★☆
付録のドラマファクトリや秘伝は正直あまりよいとは思いませんでした。
背後に体系的なノウハウのある著者のような人が使ってこそ有効であり、本書を読んだだけの人があの設定項目を埋めたところでノイローゼになるのがせいぜいだと思います。
著者は1つ1つの言葉が洗練されていてたとえば「環境」と「世界」など似た言葉であっても
明らかに使い分けています。こういった微妙な違いにかなり重要なことが隠れています。
環境図やフラクタルは実際に色々なドラマを分析して自分で書いてみてみた人間にとっては
漠然と気がついていたことを明確な言葉で説明されていて驚くのではないでしょうか。
シナリオの本でよく書かれている「前提」と呼ばれるものに近いものが紹介されています。
文芸という罠に陥らないために「誰が何をどうしたのか」という具体的で短いフレーズで書きます。
本書はドラマに関しては一級の著書だと思いますが、この本だけでシナリオは書けない気がします。
内容は参考になるのですが・・・
★★★☆☆
シナリオ構成の基礎からドラマを盛り上げるための理論まで、大作ゲームを例に丁寧に書き込まれていて、とても参考になりました。
しかし、著者が自身の世界に浸っていて、読みづらいところがチラホラ見受けられました。
言い回しも、回りくどいです。
たとえば、序盤の一文。
「いずれにせよ、この 正 と 反 との力は、 真っ向から激突 して火花を散らし、その間から 突如 として、そのいずれでもない、 合 の結果を生み出します。」
なんか凄そう……というニュアンスは伝わるのですが、意味不明過ぎです。まさかこの一文が、環境と主人公の設定についての基礎説明だとは思わないでしょう。読者は取り残された気分です。
タイトルにドラマ作法とありますが、説明文までドラマチックなのはいただけません。
文字の強調や装飾も偏っていて、かなりしっかり読まないとポイントが非常にわかりにくいです。
おまけでついている創作支援プログラムが良かっただけに、この読みづらさは残念でした。
ゲームドラマ論を体系化していてわかりやすい
★★★★★
前著「ゲームシナリオ作法」の内容が非常にためになったため、今回も
購入しました。前著と内容がかぶる部分が多かったような気がします。
プレーヤーである主人公は超目標を持ち、それに向かった行動をする
貫通行動が、ゲームドラマの作法として必要である。
主人公の行動を正として、それを妨げる反とすると、そのぶつかりが
大事であり、この繰り返しがさらに緊迫を生じて、ゲームドラマとし
ての面白さになる。
ということが、繰り返し丁寧に、また、具体例を織り交ぜて説かれて
います。
ゲームドラマは、実際に書かないと作れませんが、その手助けとして、
筆者開発の「ドラマファクトリー」というツールが紹介されています。
素晴らしい本です。
創作のための本
★★★★★
主人公がある「目的」のために、いくつかの難関を乗り越えて、最終的には「目的」を達する。そういったゲーム的な物語の作法について書かれた本です。
ゲームの物語はどういう盛り上がりを見せるべきか、どういう段階を踏んで物語を進めていくべきか、シナリオのテンポはどうあるべきか……またそういった論のほか、実際に物語を作るために役に立つであろうツールも用意されています。このツールはネットでPDFファイルとして配布されているのでとても便利です。
ゲームの考察のためドラゴンクエストの7および8、ファイナルファンタジーの9と10が取り上げられていますが、かなりストーリーの深くまで記述されているため、現在プレイ中の方やこれからプレイすることを考えている方はその辺りは読み飛ばすなり何なりしたほうが良さそうです。
ゲームの考察、「善」「悪」とはどういうことか、など純粋に面白い内容もあって、実践以外の部分でも興味深く読むことが出来ます。
またゲームシナリオのための、と銘打ってありますが、普通に小説などで物語を作る場合にも充分参考になるかと思います。どちらかといえばゲーム寄りな物語にはなるでしょうが。創作活動全般に、役に立つ本ではないかと思います。
ゲームシナリオに興味のある人は一読を
★★★★☆
特にRPGやアドベンチャーゲームなどに代表される、コンピュータゲームのシナリオがどうあるべきか、どう書くべきか、という「作法」に関して、映画やドキュメンタリーのシナリオを長く手がけてきた著者が、そのノウハウをゲームシナリオに関して論じた書。
映画のシナリオや小説の書き方に関して書いた本は多いが、このようなゲームに特化した本は、(著者の前著を含めても)極めて数が少ないので貴重である。簡単に書けるためのパターンが示されており、それも役に立つが、それだけでは良いシナリオは書けないわけで、より突っ込んだ研究として、実際の有名ゲームのシナリオが細かく解説されている。有名ゲームのシナリオに対する意見には異論もあると思われるが、著者の深い考察は一読の価値がある。
ゲームのシナリオを書きたい人や、考察したい人には読んでおく価値のある本。