「ミステリの枠を超えた」とかいう言葉で評価される事も多い作者ですが、この作品は、まあその、所謂メタ・ミステリではあるのでしょうが、然し芯の通ったオーソドックスな本格物、という風にも読めると思います。筋がキッチリ立ちますよ。意外と、と言っては的外れでしょうか。
長さを感じずに読了する事が出来ました。お奨めです。
SFはSFで嫌いじゃないんだけど、それならそれで最初からそういって欲しい。本格推理の謎解きの部分でSFが出てくるのは反則だと思う。それに、魅力的なキャラクターたちも最後であっという間にいなくなってしまったし。
まあ、漱石の「吾輩は猫である」を読み直してみようと言う気になっただけでもいいか。軽妙洒脱な文体は、まさに漱石そのものだった。
事件の謎もおもしろく、猫の目からみた上海の描写なども興味深く読め、娯楽作品として最高です。漱石のファンの人に、ぜひ読んでもらいたいな。