学校になじめず孤独だった少女時代、オーディションに駆け回る日々、スパイス・ガールズの結成から成功を勝ち取るまでの前半は、さながら青春映画のようだ。成功するために、強い信念を持って行動することの重要性を教えてくれる。ところが、デイヴィッド・ベッカムとの出会いから妊娠、長男ブルックリンの誕生を描く後半は、少々様子が変わってくる。世界中を駆け回るハードなスケジュール、仲間やボディガードの裏切り、マスコミの嘘、家族をおびやかす脅迫。そんななか自分を失いそうになりながらも、夫や息子に力を与えられ、ヴィクトリアは自ら道を切り開いてゆく。ただのサクセスストーリーにとどまらず、セレブリティならではの苦悩や不安が赤裸々に明かされている。
貴重な写真もカラーで掲載。歯並びの悪い子供時代、かつての恋人達(!)、スパイス・ガールズのメンバーやデイヴィッドとのプライベートショット(デイヴィッドが坊主になる瞬間も)など、ここまで見せてもいいのだろうかと心配になるほどのサービスぶりだ。
ヴィクトリアがあまりサッカーに興味がなかったこともあって、選手としてのデイヴィッド・ベッカムにはあまり触れられてはいないが、彼の誠実な人間性については事細かに記されている。彼のファンにとっても貴重なものになるはずだ。(大脇太一)