本書は、国際会計基準をめぐる世界と日本の動きと、それがおよぼした日本経済への影響をドキュメンタリー風につづっていく。著者は、会計制度への不信が、国際社会における日本企業、そして日本経済そのものの不信につながり、長期的な経済低迷の遠因となったと指摘する。にもかかわらず、会計の国際化が遅れたのは会計基準の裁量権を大蔵省が握っていたことが原因であると主張している。
そして、遅まきながら「連結決算中心」と「時価会計」という国際会計基準の2本柱に準拠することで、日本の企業経営は大きな転換期を迎えているが、金融機関の含み損処理の先送りで会計基準の国際化が今後さらに遅れることに、著者は懸念を隠さない。
「国際会計基準」という単語すら一般にほとんど知られていなかった1991年から、「強く見えたのはモノサシ(会計基準)が狂っているからで、本当は日本企業は強くない」という仮説を立て、この問題に取り組んできた著者だけに、会計基準をめぐる動きの描写は非常にリアルでおもしろい。専門用語はほとんど使われていないので、会計の知識がなくても無理なく読めるようになっている。日本の経済と経営の問題を考えるうえで、是非読んでおきたい1冊である。(戸田啓介)