ナガトの血を継ぐ者
★★★★★
帝国の黄金期を支えた第一大臣「ブリアン・ド・ラージュ」の生い立ちを描いた物語の続編です。
20年以上前に発表されたエピソードの中で帝国の歴史を研究している大学教授の台詞として、一度だけ名前のみが登場した「ハラルド帝」誕生についての謎が明かされます。
未消化のキャラクタ名を使いながら年代的矛盾を解決し空白の時代を補完した所はお見事としか言いようがありません。
本作品をより良く理解するには「カルダームI世」というエピソード読む必要がありますが残念な事に現在単行本未収録となっております。
男子に限る、皇帝のなんと過烈なことか。
★★★★★
「エピタフ」待望の2巻です。聖センセ、老獪なストーリーテラーの本領発揮ですね。
明晰なカルダーム一世も権力に固執するあまり道を見失いかけてしまいました。オーリック家とマイノック家の確執。そしてマイノック皇帝のなんと過烈なことか。
そして、皇帝継承の筋書きを立てた者こそ、ド・ラージュ。またまた続きが楽しみになりました。聖センセ、がんばって。
『メヌエット』で女帝トレスがカール・ダームに託した部分
★★★★☆
「まっぴらだね! 私はコンピューターもエスパーも大きらいなのさ!」
上の台詞はラフノール司祭長代理のロックに「いずれコンピューターに頼らなくてもいいしっかりした体制ができる」「…君が皇帝になれば?」と言われた時のブリアン・ド・ラージュ銀河帝国第一大臣の返答でした(宇宙歴0638年)。
この作品は(良い意味で)「古くからの読者へのファンサービス」的な作品と捉えられている面もありますが、「少年キング」連載時に描ききれなかった銀河帝国混乱期の空白部分を描いた、立派な「SAGAの一章」でもあります。
帝都ファーゴに降り立ったテレーズ・マイノックの目的は「ライガー1」へのアクセス。
彼女を補佐するエスパー・フラン。彼女が「超人ロック」である事にブリアンは気付き始めます。
宮殿へ近づく過程でテレーズは前マイノック公・セテのイメージを受信する。その意味を知るのは少し後になってからです。
主端末に繋がるエレベータ、だがこの先は皇帝の血縁でなくては入ることはできず、テレーズ一人で潜入。
現銀河帝国皇帝カール・ダームと対峙するテレーズ。
思えば自分もトレス上皇も「ライガー1」の操り人形であったと、退位を決意するカル・ダームI世。
旧年表上で見るとカール・ダームI世退位が0585年、ハラルド在位が0585〜0636頃の51年間、カル・ダームII世(「大地の歌」立案者)の在位が0636〜0676年、カル・ダームIII世が0676〜0730年頃ですが、過去の作品でもいつカル・ダームIV世の治世に移行したのかはまだ明言されていません。
本作の主人公であるブリアン・ド・ラージュは、現在までに描かれている作品ではカル・ダームIV世の時代の銀河帝国第一大臣としてしか登場していませんが、銀河帝国第5代皇帝であるハラルドこそマイノック公テレーズであるので(第5代皇帝はロドルフに非ず)、もっと以前から帝国の要職に就いていた可能性も否定できません。
いずれにせよこの「謎」は本編の中で明らかになると思います。
また銀河帝国第一大臣のブリアン・ド・ラージュが何故これほどまでに極度の超能力者嫌いとなったのか、その核心にも触れていくのだと思います。
『メヌエット』で女帝トレスがカール・ダームに託した部分が、ド・ラージュと新皇帝ハラルドに受け継がれます。
セテ=ロックのテレーズに対する父性愛と、ライガー教授の「人間不信」が根底にある帝国のシステムが対照的です。
続きが本当に楽しみです。
帝位継承を目指したマイノック公はライガー1へ・・・
★★★★☆
収録内容
・第9話
目的地の島に着いた一行は真の目的地ライガー1へ・・・
・第10話
地下通路の罠を抜けた一行だったが、その目の前には・・・
・第11話
地上からライガー1へ向かう一行の前にガードが・・・
・第12話
銀河皇帝を退位したカルダームT世、そしてマイノック公は・・・
・第13話
カルダームT世の決めた決まりにより皇帝になれないマイノック公だったが、バイロンの提案により・・・
・第14話
エスパーフランの正体に気づいたバイロンは・・・そしてカルダームT世の息子ロドルフは・・・
・第15話
士官学校を主席で卒業したバイロンが配属されたのは最新艦の「ラシードU」・・・そして「ラシードU」は帝国との合同演習に・・・
・第16話
帝国との演習1回戦で勝利したマイノック軍だったが、帝国側はレンツ中尉の提案で・・・
遂にマイノック公ハラルドの即位の真実が語られる・・・
そして現代では不可能な性転換により立場の変わった二人の継承者の描きかたが最高!
後半の合同演習の模擬戦、二人の天才の戦いが盛り上がったところで終わっているのが残念ですね
しかしこの物語どこまでを描くのかな・・・