スパイは必要、しかし警察がこの体たらくでは・・・
★★★★☆
公安警察に属していた著者による、生々しい公安警察の実態が描かれた本である。警察官の中でも優秀な人材だけが、現代の中野学校で、公安警察としての教育を受けることができる。
公安警察官となったならば、民間人のスパイ候補を見つけ、自腹を切ってでも育て上げ、共産党組織などに送り込む。スパイ候補選びも、交通違反等の前科がなく、組織の中で幹部になりそうな優秀な人材を選び、自分から売り込んでくるような人間は相手にしない。
歴代の警視総監を見ても分かるように、公安警備警察は、刑事警察や交通警察とは一線を画したエリート組織である。しかしその現場は厳しい。自身が死ぬこともあるし、せっかく育て上げた民間人の協力者も死んだりすることもある。まともな神経を持った者ほど、著者のように苦しむことになる。
それに輪をかけるのが、警察内部の腐敗である。上司によるピンハネにより、現場の工作費は常に不足している。警官によっては民間に天下った後、公安時代に得た個人情報を私的に利用するものさえいる。
公安組織は必要である。共産党、カルト組織、テロリスト、国体維持のために監視を続けなければいけない対象は多い。しかし現場の公安警察官は身を削って活動をしている。
現場の警察官が誇りを持って働けるような、警察組織の刷新が求められている。