初めての「サツ回り」で、緊張して取材相手の警察官に挨拶すらできない状態から、工夫を重ねて信頼を築き、やがて情報をもらえるまでにいたったこと、事件・事故の現場リポートで、書いた文章をそのまま読み上げることへの疑問から「自分の言葉」を探ったこと、ニュースキャスター時代に目線をどこに置いて話すかや、「全体像」をどうやって見せるかに腐心したこと…。エピソードにはみな、報道現場に特有の緊迫感が流れている。
そこから得た方法論として、相手と話しやすくするための「共通体験」づくり、「つかみ」や「息づかい」などのテクニック、聞く人の知りたい順に話す工夫などのほかに、あらかじめ自分の頭の中で「絵」を描いて説明する、まず「言葉にする」ことで考えを整理するといったアドバイスも示している。
「週刊こどもニュース」で「わからない」を連発するこどもに向き合った経験から、相手は何を知らないのか、この話し方でわかってもらえるのか、本当に伝わっているのか…という「自問自答」や「相手への想像力、相手への思いやり」の大切さを痛感したという著者。その真摯な姿勢から、伝えることの真髄が学べる。(棚上 勉)