インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

価格: ¥9,536
カテゴリ: 文庫
ブランド: 東京創元社
Amazon.co.jpで確認
歴史改変的本格推理の装いだが、実はもっと深い ★★★★★
第二次世界大戦のときにナチスドイツとの和平を選んだイギリスを舞台に、その講和条約を締結した立役者である下院議員の殺人事件を描く。

一見、歴史改変的設定の本格推理小説の装いをしてはいるが、実は、もっと深い。ナチとの和平という選択をしたイギリスが、どのようにファシズムに染まっていくのか、ユダヤ人迫害へと進んでいくのか、という有り得べき歴史の壮大な思考実験の感がある。
ミステリとしてはあまり謎解きの要素はなく、物足りないし、事件の結末は納得がいかないところもあるだろうが、むしろ、この小説が単なるミステリにとどまらない証左でもある。

著者の描写には、著者自身の政治的信条、歴史観も見え隠れするが、それに対して、賛成する人でなくても、どのようにして、私たち民衆は、自ら進んでファシズムに取り込まれていくのかという点について、深く考えさせられるだろう。
作中でジョージ・オーウェルと思しき作者の『1974』という小説も題名だけだが出てきて、この小説、おそらくはこの三部作がディストピア小説として描かれていることの象徴のように感じた。

舞台であるイギリスの歴史や人物について、もう少し知識があれば、もっと楽しめたと思うが、幸い、詳しい訳注もついているので、参考にしながら読んだ。

主人公であるスコットランドヤードのカーマイケル警部補も魅力的に描かれている。
まだ分からないけど、高校生にはお勧め ★★★☆☆
「館」モノのミステリを期待していたが、全然違った話だった。
「もし〜だったら」という、架空の歴史物語。
舞台は1949年のイギリス。ナチス率いる第三帝国(ドイツ)と連盟を結び、戦争から回避した。ストーリーの始まりでは、イギリス政権が第三帝国の唱えるユダヤ人排斥から一線を引いているものの、ストーリーの途中で首相の交代が起こり、後にナチズム化してしていくことが暗示されている。
政治を動かす中心人物々が集まるファージングの屋敷で、次期内閣入りを期待されていた国会議員が殺され、次いで、襲撃事件が起こる。犯人が残した痕跡は、ユダヤ人とボリシェヴィキ(マルクス・レーニン主義の社会主義者ということになるが、架空の歴史上どういう政事の立ち位置か、本書でははっきりしていない)。
ユダヤ人と結婚したイギリス貴族の女性、ルーシー・カーンと、スコットランドヤード警部補、ピーター・カーマイケルが交互に語り、2つの事件を通し「ファージング」の内情をひもといていく。
ミステリとしての謎解きは後半あっさりと解明し、話の中心は政治権力の恐ろしさ、ということが分かったところで1巻終了。ナチズム、ユダヤ人、同性愛者、社会主義、テロリズム、階級制度などの要素は断片的で典型的な型に収まっていて(この意味では、世界史を取っている高校生などは読みやすいかもしれない)、キャラ設定のためだけに用いられたも取れるが、一方で、こうした重い要素の1つ1つですら政治権力の前では「些細なこと」という暗示なのかもしれない。
この1冊だけではまだ分からないことが多すぎるので、シリーズ3巻全部読まないといけないようだ。
歴史改変三部作の第一作目 ★★★★☆
ナチス・ドイツと講和したイギリスを舞台にした歴史改変三部作の第一作目。

二次大戦を契機にした歴史改変もので、ユダヤ人問題と聞くとユダヤ警官同盟が思い浮かぶけど、あちらよりも普通のミステリ寄り(に見える)。
戦争を終わらせた最大の権力者たちとその屋敷という定番の設定で、権力者一族でありながらユダヤ人と結婚した女性と敏腕警部補の狭い視点で交互に語られるため、改変ものの醍醐味である現実とのギャップはあまり楽しめない。
しばらく読んでいて、これは単に改変世界を舞台にしただけのミステリなのかと思いきや、後半から個人の奮闘などどうにもならない、真実も法律もねじ曲げる強大な権力が見え始め、ドイツとの和平は前座に過ぎない、さらにグロテスクな改変を、主人公同様に実感することになる。
最もわかりやすい改変の『一九七四』は、イギリスにとっての終戦が早まったことによって、こちらも10年早くなったのかもしれないが、それより何年も早くビッグ・ブラザーの支配が始まることを暗示する重苦しい結末。
ナチスはまだソ連と戦争を続け、おそらく、日本も軍国主義を維持したまま歴史が進んでいるように見える。イギリスだけでなく、世界はどう変貌していってしまうのか、光明は差すのか、それとも暗黒の未来が待っているのか。