アンドロイドは羊の夢を見るか?
★★★☆☆
石黒氏も作中で言っていますが、石黒氏の人型アンドロイド、ジェミノイドや本田のアシモはそれ自体直接的には、なんの役に立つものではないそうです。確かにアシモはホンダのCM以外での使い道を見たことがありませんね。これらの研究はロボット自体というよりそれに付随した技術研究が他の用途に転用されて利用されることが多いそうです。しかし彼自体はその転用先を考えて開発を進めているのではなく、あくまで使い道のないアンドロイド研究をしています。直接的には役に立たない技術を純粋に楽しんでいる筆者はある意味うらやましい環境にいるのだと思います。
そんな仕事をしているからこそ、ロボット作製をとおして「人間とは何か?」という哲学的な問いに導かれるのでしょう。究極に進んだ科学技術の中で、人間とロボットの違いというのはますますあいまいなってきています。人と見分けられないヒューマノイドなんてまだ先だと思っていてもA.I.を含め技術的には近くに来ているようです。
本書では取り上げられませんでしたが、ロボットの苦悩を題材として優れていた作品としてPLUTO (1) (ビッグコミックス)があげられるでしょう。姿かたちはそれぞれですが、そこには人の心を持ったロボットが受けるであろう試練を見事に描いています。