白人ヒップホッパーという狭い枠に留まることなく、21世紀初頭を彩る最大のトリックスターとなったエミネムの4枚目のアルバム。“アンコール”というタイトルの通り、社会からの孤立、アメリカの抱える社会問題、母親との愛憎関係、娘へのメッセージ、さらには映画『8Mile』に出演した経験まで、過去作品でとりあげた題材が再びモチーフとして取り上げられている。ただ、それが二番煎じに陥ることなく、それぞれ新しいアイディアとヒネリが加えられているのはさすが。

   ピーウィー・ハーマンやビーヴァス＆バットヘッド、『トライアンフ・ジ・インサルト・コミック・ドッグ』まで、アメリカの代表的コメディをパロディしまくるのは日本人には判りづらいかも知れないが、マイケル・ジャクソンをコケにしまくった「ジャスト・ルーズ・イット」を筆頭に、言語の壁を超えたクールなライムが満載。常に音楽シーンを揺さぶってきたエミネムの活動の総集編として重要な作品だ。

   初回限定盤は「ジャスト・ルーズ・イット」ミュージック・ビデオを収録したボーナスDVD付きで、彼の世界観をヴィジュアル面から楽しむことが出来る。（山崎智之）