読みにくい翻訳!
★☆☆☆☆
伝承文学の再話を得意とするケヴィン・クロスリ=ホランドによる「北欧神話」の再話である。神話本体だけでなく、解説やノートもしっかりしていて、信頼できるものと判断できる。ところが、原文の英語と比較すると、日本語訳があまりにもひどいのである。とくに、山室静による、「解説」にはイライラしてしまった。
例えば、ヴァイキング船についての説明はこんな具合に書かれている「どちらかの先端が船首に盛り上がる竜骨材の上にのった重ね接ぎの船(重ね合わせた板を鉄釘でつなげた)は、船が美しくもあれば、また、荒波の中でも非常に柔軟だった」。「どちらかの先端が船首に盛り上がるって、何なんだ?」と、まずそこでつまずいてしまった。これはおそらく、竜骨に沿って板を両側に重ね合わせて船体を作っているということだろうと私は読んだが、しかし、ひどい文ではないか。また、それより一文あとに、「精巧にカーブした船首は、竜首でよりもより多く彫像で飾られ…」と続くが、これも意味不明である。これは、「流線型を描いた船首は彫像で飾られているが、多くの場合、竜の首がつけられていた」とするべきであろう。以下、推して知るべしである。
神話本体も読みやすい明晰な日本語とはいえず、文体に一貫性がない。そのため、これを朗読して北欧神話を紹介しようとした私の目論見はくずれてしまった。これは、訳者の責任だけでなく、出版社の編集にも責任を問うべきであろう。その分野の大御所に頼んだからといって、すぐれたものができる訳ではないという好例である。誠実な出版社であれば、訳し直しを考えるべきである。
北欧神話の美しくも荒々しい世界にようこそ!
★★★★★
北欧神話の世界観は結構好きなので、早速手にとって読みましたが、いやあ、すごい量ですね。340ページで、しかも上下段になっており、とてもじゃないが、1日では読みきれる代物ではありません。北欧神話にあまりお詳しくない方でも、ロキやオーディンくらいはご存知かと思いますが、ロキが悪さ(小さないたずらから美形の神バルドルを死に追いやるような悪質なものまで)を重ね、そのくせ時には神々を助けることもありますが、結局最後には神々に敵対した「トリックスター」ならば、オーディンは知略に優れた「策略家」であるといえましょう。ウトガルド・ロキというロキと間違いやすい奴もおりますが、こいつも幻覚で相手を騙したりします。相手を騙すという点においては、確かに似ているかも(笑)。
また、本書では北欧神話に登場した神々のことが巻末で簡潔に紹介されており、資料としてもなかなかのもだと思います。一冊買っておいて、暇なときに読めばいいでしょう。まあ、値は結構張るんだけどね(笑)。ギリシャ神話も悪くないが、やはりこちらのほうが面白いですね。神々と巨人族の最終決戦「ラグナロク」とか。後はオーディンに付き従う戦乙女ヴァルキューレたちの活躍も結構なものです。
まず、本を開いてびっくりでした。
★★★★★
本の厚さは2センチほどでそこそこの存在感がありますが、ページは上下2段になっており、なかなかの圧巻です。
(ページ上下段のスタイルは何故か歴史を彷彿とさせます)
お手軽な北欧神話関係の作品では、神々の関係や基本とする世界観が把握しにくかったり、
また、重要な手がかりとなる文章が独特の言い回しでわかりにくかったりと
個人的に不満がありましたが、この本は訳がとてもよいです。
「北欧人」を「北欧人」たらしめる「北欧」ならではの地形や天候、歴史を端々に感じました。
資料写真がはっきりとしていて見やすいですし、巻末の索引もおもしろいです。
はじめて「北欧神話」にふれられる方には、特におすすめできる1冊ではないでしょうか。
あっという間に読んでしまいました!
非常に読みやすい物語です。
★★★★★
いくつもの章に分けられた小物語の集まり。
でも、前後の物語が非常にわかりやすくなっています。
オーディーン、フレイア、ワルキューレ、ロキ、世界樹ユグドラシル・・・大体のゲームがここから名前取ってます。
どういう存在かわからない方もこれら一人一人の神について細かくわかりやすく書いてあります。
北欧神話ノート、索引で本編のわからないところの説明があります。
ただ、340Pあり字数が多いので、読む方は腰を据えて読んで下さい。
北欧神話の入門書として最適です。
★★★★☆
北欧神話を初めて読むという人にオススメ。
第1に北欧神話として紹介し得るものはたいてい紹介してある。第2に解説がよく行き届いている。各神話の出典などもきちんと述べられている。第3に読み易い。訳が良いことはもちろんだが、本書の構成も関係している。解説を「はしがき」と巻末の「北欧神話ノート」でしているので、神話と解説が入り混じったような文章を読まなくてすむ。これが以外に嬉しい。純粋に北欧神話に親しみたい人にも、それなりの解説を読みたい人にも、薦めることができる。特に「ノート」は神話1話ごとに解説しているので、1話読むごとに「ノート」の解説を参照するという読み方もできる。
北欧神話を楽しんで欲しいというこだわりによって著された1冊。図版多数。