《猫丸先輩》シリーズの第一短編集
★★★★☆
◆「日曜の夜は出たくない 他二編」 ◆「空中散歩者の最期 他二編」
◆「約束」
夕方、両親がまだ帰宅していない無人の家に帰りたくない麻由は何げなく
立ち寄った公園で、ベンチに寂しげに座っている「おじちゃん」と知り合う。
その「おじちゃん」も、家に帰りたくないという。
それ以来、麻由と「おじちゃん」は、ほぼ毎日、会って話をするように
なったのだが、あることをきっかけに、「おじちゃん」は、もう公園には
来られないと麻由に告げる。麻由は明日、もう一回だけ会ってほしい
と「おじちゃん」に頼み、約束を交わしたのだが……。
心優しい少女と、どこか翳のある「おじちゃん」の切なくも微笑ましい
やり取りを描くことで、ある物品に、事件を解く重要な手がかりとして
の性質が付与されます。
◆「誰にも解析できないであろうメッセージ」
一見すると挑発的な、しかし実は自嘲的なタイトル通りのエピソード。
7編の短編をリンクさせる仕掛けがほどこされていますが、作中でも
語られているように、解析に必要なデータを示さない、アンフェアな
代物。仕掛け自体はお遊びで、次話の前フリと考えるべきでしょうね。
◆「蛇足――あるいは真夜中の電話」
本書の最も“外側”に位置する最終エピソード。
これによって、ある短編の解決の不自然さは解消されますし、描き出される
「犯人」の屈折した心理は面白いとは思いますが、説得力に乏しく、読後感
が悪いと感じる向きも多いでしょうね。
韜晦戦術は買えますが
★★★☆☆
"猫丸先輩"を探偵役とする連作短編集。連作短編集にしては物理的トリックもの、とぼけた妖怪談、船上もの等、良く言えばバラエティに富んでいる、悪く言えば一貫性がない構成になっているが、その訳が最後で明かされる所が本作のミソ。
それにしても、冒頭の「空中散歩者の最期」のトリックは酷い。作者には物理の初歩が分かっていないのではないか。物語の添え物として話題に出すくらいなら笑って済ませられるが、これがメイン・トリックなのだから開いた口が塞がらない。作者は根っからの文系なのではないか。
他の作品も各々違和感を感じさせながらも、一応の解決を見る。韜晦戦術である。そして、最後で作品全体の構想が明かされて、ナルホドとなる仕掛けだが、正直あまり感心はしなかった。全体構成がこうなのは、作者の都合であって読む方には関係ない。それより、短編一作々々に磨きをかけた方が良かったのでは。
面白いv
★★★★☆
短篇連作集です。
作風というか、それぞれの雰囲気が違っていて面白いです。
全然雰囲気は違うのに、謎を解くのは名探偵猫丸先輩。
そして、脇役の登場人物がそれぞれの作品の中に、バトンリレーのように登場します。
最後の章では、意外な落ちで面白かったです。
ミステリー好きの方はぜひ
『いいか、忘れるな、人にはな、捨て去らなきゃいけない過去と、造り上げていかなきゃならん未来ってもんがあるってことを』(BY猫丸先輩)
過去は捨てられるもんじゃないぞ、猫丸くん…
しまりのない連作
★★★☆☆
1994年に出た単行本の文庫化。
猫丸先輩シリーズの第一作。すでに著者の持ち味が良く出ていて面白い。良い点としては、パロディの腕が巧みなこと。それから人間の心理が良く書けていること。殺人(犯罪)の動機を、これだけ手際よく書けるというのは、尊敬に値する。
悪い点としてはトリックが甘いこと。完全なミスもあるし、納得のいかない結末も。また、はやりだからかは知らないが、連作形式にして最後に全体をつなぐキーが説き明かされるというのは、大失敗だった。
まあ、今後に期待というところだろう。
成立しないトリック
★★☆☆☆
倉知さんて物理ができないんだと思う。冒頭の『空中散歩者の最期』は、高校1年レベルの物理の力学が分かっていない証拠。トリックが成立していない。
他の短編は秀逸なだけに、冒頭の1作が全てを台無しにしている。
この指摘が分からない人は、物理の教科書を読み返してね。