御三卿・田安徳川家のおぼっちゃまがその身分を隠し、
お忍びの延長くらいの感じで定町回り同心見習いとなり、
一風変わった事件を次々と解決していく連作集第四巻。
この世間知らずのおぼっちゃま、とある剣の流派の秘密特訓を受け
すこぶる腕の立つ正統な後継者であるというのが裏設定。

謎解きも時代考証も本格派というにはやや甘い点があり、
@コミカルな登場人物たちとの日常描写、と
A秘伝流派にまつわる剣戟シーンとが
雰囲気においてますます乖離してしまっている点など
気になる点は多々有るが、それを差し引いても
読み易く、止められないタッチは癖になる。

　「若さま同心　徳川竜之助」シリーズの第４弾。
　タイトルとか設定とかは、ちょっとこの本は大丈夫かなという気にさせるが、意外にレベルの高い物語で面白い。特に、本書の立ち会いのシーンは秀逸。普通の剣豪小説では許されないような手法だと思うが、あえてやってしまったところが素晴らしい。ぜひ、読んで欲しい。
　捕物帳としても高水準。事件の突飛さと合理的な解決のバランスが上手い。
　馬鹿にせず手にとって欲しい一冊だ。