美意識対する哲学
★★★★☆
白洲正子さんが、ふだん使いの“器”150点 (食器;酒器;茶器;花器;文具ほか)を 物の美に対する一流の鋭い目と独自の世界を通してまとめあげた, 随筆家としての彼女の人生最後の一冊。「どんなに上等なものでも、しまっておいたら必ず顔色が悪くなる。つまり、死物と化すのである。私は毎日そばにおいて荒っぽく使っている。時には瑕がついたり、はげたりするが、道具はそこまでつき合わないと、自分の物にはなってくれない。道具は物をいわない。だが、美しくなることによって、こんなに育ちましたと、嬉しそうな顔をする。その瞬間、私は感動する。」(「私と道具」より) 久しぶりに, 大きく頷かされた文章である。白州さんの"美" に対する 鋭い見解や美学論を 難しいと感じる人もいると思うが, 彼女のユニセックスの性格をあらわす鋭い切り口と繊細な感性が, 私にはとても新鮮であった。