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魔女の息子

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本
ブランド: 河出書房新社
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自伝的らしいです ★★★★☆
『魔女の息子』です。
『ゲイのフリーライター和紀の日常を描く。老いらくの恋に燃える母親に接するうち、彼の中で何かがうずき始める…。人間の弱さ、いとおしさを伝える自伝的作品。第40回文藝賞受賞作。』

まず基本設定として、米中枢同時多発テロ事件以降、平和平和という声がやたらと聞かれるようになった時代。主人公は四十路の独身で、ゲイのフリーライターです。家庭環境はというと、母親が老いらくの恋に燃えていて、そんな母と弟に嫌気がさした兄は既に家を出てしまっています。ゲイにせよ老いらくの恋にせよ、他人に迷惑をかけずに自分の好きなように自由に生きるのは、雁字搦めの社会においては難しいのでしょうか。
というわけで、作中では幾度か男×男の性描写が出てきます。けっこうどぎつくもあります。

作中には多数の人物が出てきます。母親や好きな男や仕事関係の人や……その全てを、主人公はどこか冷めたような批判的な目で見ています。でもそれは上から目線のこきおろしではなく、自分自身がゲイということで社会の底辺ということで、どこかもの悲しくせつない視線です。世界平和なんて言われても、自分が平和にほど遠いわけですし。
カテゴリーとしてはやはり純文学の方に入るでしょう。エンタメとして物語的な盛り上がりはさすがにありません。ただし随所で細かい伏線をちりばめて少しずつ回収しながら進んでいくので、読み進めるベクトルは持っています。
日常を過ごしているうちに、人間関係は刻一刻と変わって行きます。そんな中で迎えるラストでは、主人公は○○を呼び出して○○を受けに行こうとします。
結果は書かれていませんが、たぶん……
それでも、今までよりは少しだけであっても強く前へ一歩を踏み出そうとする終わり方で、余韻のあるラストだったと思います。
本はさほど厚くありませんし、文章も平易なので一気に読めると思います。登場人物が多数入り乱れるので、混乱してしまわないように読みたいものです。
評価は★4です。
個人的にはあまり買いとは・・・。 ★★☆☆☆
ゲイのフリーライターである和紀と、老いらくの恋に燃える母や、その二人を嫌って家を出た兄、その家族その他らとの関わりや有様を描いた第40回文藝賞受賞の作品です。しかし、平明と言われればそうと言えるかもしれませんが、全体の起伏に乏しく、あまり楽しめませんでした。ゲイというものへの造詣や興味が微塵もないので、作品自体に目が向かなかったということもあるのかもしれませんが、そういう意味では人を選ぶ作品であるかもしれません。母の叶わぬ恋も、確かにせつなくはあるのですが、造型がゆるいというか、なにか違った描き方をすればその設定をもっと活かせたのではないかとも思いました。
鮮烈で寂寥で優しい作品 ★★★★★
ゲイというマイノリティーな世界で生きる主人公の心理描写が淡々と、しかし繊細に描かれていて、影像がスクロールされました。周囲の人達の、個々に抱かえている苦悩やささやかな希望、ままならない現実に、それでも、人はそれなりに自分と折り合いをつけながら、日常を形成していくんだなぁって、なんだかゆるい励ましを感じちゃったりしました。ハッテン場と称される場所やゲイの人達の性欲の在り方とか、リアルで、ちょっとした驚愕はありましたが、興味深くもありました。愛の介在なしのセックスは出来ても、愛の介在無しでは、生き辛い…
とても読みやすい文体で、他の作品も是非読ませていただきます。
胸がしめつけられるような感動 ★★★★★
老いたお母さんの恋が切なくて切なくて。年をとっても、同性同士でも恋ってどうしてこう人の心を揺さぶるのでしょう。
私はあのお母さんのようにいくつになっても恋がしたいし、胸の震えるような感動を日々に求めたい。
人はどうしようもないほど孤独だけど、その孤独の中にこそ人と人の温かい血がかよっていることを教えてくれる小説です!
作者の次回作に期待します。
迷い、思い煩い、生きる ★★★★☆
第40回文芸賞の同時受賞3作品のうちで、いちばん気に入ったのが、この『魔女の息子』でした。自伝的作品ということですが、伏見氏の年齢、人生経験が作品に落ち着きとまとまりをもたらしているといえましょう。ホモ・ゲイ・同性愛・カミングアウト・・・等々の、自分の日常からは遠い言葉がポンポン出てきて、そしてセックスのシーンでは、ちょっと吃驚しましたが、それらが一人歩きしない抑制の効いた文体で、人が図らずも背負ってしまった苦悩、あるいは運命といったものを、真面目に綴っていて、とても好感が持てたのです。自分の性の嗜好の本質を悟ったとき、それを自身が受け入れるまでの苦悩や、他人というより、まず家族との折り合いのつけ難さなどに、“僕”は痛めつけられてしまっています。亡くなった父とのことを思い返す“僕”の、苦渋に満ちた語り口は、痛々しい。そして、もう一つの、77歳の母の恋も、この作品の重要なサブ・テーマです。恋人を“あちらさん”と呼び、順調にお付き合いは続いていたのに・・・。人生の終焉を垣間見るような、恋の終わりが待っていたのです。

「人は、よりよい生を求めることで日々をつないでいく。(中略)大切な何かを切り捨てることだってあるだろうし、無理やりにでも、善し悪しの線引きをすることだってあるだろう。(中略)それによって失うものの痛みを忘れずに生きていくしかないのだ。」・・・作品ラスト近くの、“僕”の言葉は、誰の人生にも当て嵌まる、ひとつの真実だと思いました。私も迷いながら生きている、と確認させられたのでした。