洗練から恍惚へ・・・脱重力系スムースジャズの決定版!
★★★★★
肩のこらない脱日常的なポップジャズ・・・というのが本場米国発スムースジャズの定義だと思うのだが、競争の激しい米国では洗練という名の高みを目指してあらゆるプレイヤーやプロデューサー達がどんどん駆け登っていった末に大きな大きなマンネリズムに陥ってきたのが現状かもしれない。まあ10年近くも一つのジャンルを開拓していけば自ずとある種の限界というかパターン化は避けられないのでしょうが。その中でもリラックスしていながらも卓越した個性的なサウンドを展開し続けているのがブライアンシンプソンというコンテンポラリーなキーボーディスト。完成度が高すぎて怖いくらいに洗練度を究めつくした前作《ABOVE THE CLOUDS(まさにエアラインのファーストクラスで聴きたくなるようなサウンドといえる)》から約3年。全体的に今作はスムースジャズの原点に回帰したかのようなカジュアルでポップな印象であるが、2曲目の後半に突然ヘビーに介入してくるキーボードの意外性に心地よく目覚めたが、やはり断トツのハイライトナンバーは静謐かつロマンティックな4曲目だろう。ピーターホワイトのジェントル&メローなアコギとブライアンの独特な間合いのある(本当にこの人は点と線の饗宴とでも言うべき鍵盤タッチが冴えている!)伸びやかで瑞々しいピアノが絶妙に交錯するエクスタシー系のうっとりチューンが新鮮!
ただブライアンに限らずキエリミヌッチにしてもチャックローブやフィリップセスやマークアントワンやデビッドベノワなんかも音楽でリスナーをある種の《至高体験》へと導いていこうという意思や意図は共通分母にあると個人的には感じるのだが果たしてみなさんの感想はどうだろうか。