初期の作品を彷彿とさせる
★★★★☆
水はいまや貴重な資源であり、商品である。水道事業の民営化も始まっており、だからブルー・ゴールドと呼ばれる。その水を巡って話しは始まるのだが、実は水そのものはきっかけにすぎず物語のメインではない。物語の柱は主人公たちが進めた土地買収の話をだれがなぜ邪魔したのかを解き明かしていくミステリー。疑い出せばきりがないという状況のなかで、主人公たちは敵(商売の邪魔をするわけだから)をあぶり出していく。犯罪を暴くわけではないけれども、初期の作品群を彷彿とさせる。相変わらず文章が硬く、話も複雑で読みにくい部分もあるが、先が読みたくなる展開で一気に読んでしまった。結局、この本はミステリーで味付けしたビジネスマンの物語だった。信念をもって本気で仕事に向き合うときの充実感。そういうものを大事にしてほしいという著者からのメッセージを感じた。真保裕一らしい作品。