多彩で、おもしろかった
★★★★★
柏木ハルコと言う人の描く女の人が好きで、そのほとんどの作品(但し長編)を読んできました。
柏木ハルコに描かれる女の人は、まずその外見がいい。コケティッシュでありながら、セクシー
で迫力あるボディーライン。だいたいが圧倒的な存在感なんだけど、その理由のほとんどが、そ
こに描かれる身体、と言う感じ。ある意味、そこがいかにも漫画らしくって、私は好きです。
内田春菊の描く女性も、とってもかわいくって、素敵で、エッチ。柏木ハルコの場合、そこにプ
ラス、圧倒される迫力を感じて、より現代風です。
さて、本作は短編集。描かれた時期も、初出の雑誌も違うから、9編の作品は、多少玉石混交な
部分があります。それを含めて、多彩な面白さが味わえる。
もともとブラブラバンバンのような学園モノに強みがあったような気がしますから、本作でもい
くつかある、高校や学生を扱ったものがかなり強烈で面白い。
一方SFは、今スピリッツに連載中の「地平線でダンス」を珍しがって読んでいるけど、本作に
収録されたものに既にかなりおもしろ作品がある事を知った。これが今の連載に続いているんだ
なぁと、興味深く、作品としてもとても良くできているものだった。
かわいくって、セクシーで、どこか抜けているたくさんの女の子を、いろんなシーンに描きわけ
ている本作は、柏木ハルコの多彩な長編のダイジェスト濃縮版のようで楽しめました。
巧みなストーリーテリング
★★★★★
珠玉の短編集。
こういう作品が描ける柏木さんは、やはりすごい。
QUOJUZは着地点を見失って、
完璧な「中途半端」となりましたが、
真骨頂は、こうした緊迫感のある異次元恋愛の緻密な描写。
だからずっと読み続けます。
本書はもちろん、楽しかった、Hだった、で終わる作品もありますが、
「海女歌」、「二人は空気の底に」、「ロケット・フラワー」、
は次元が違う。文章で書けばもう芸術的領域ですよ。
特に「ロケット・フラワー」は短編ならではのラスト。
彼女の最期までのひたむきさ、本当にガツンとやられました。
これだけ多様な感じ方をさせてくれる短編集を書ける作家は、
あまりいないでしょう。
敢えていうと、この重いんだけど快適な感動は、
戸田誠二のテイストに近い。
よくこれだけあちこちに描かれたものを集めたなぁ、と感心する充実の短編集。
★★★★★
収録作
「教師失格」(2005年/週刊ビッグコミックスピリッツ)
「エンドレス山田」(2005年/漫画アクション)
「すずめ」(2003年/WEEKLY漫画アクション)
「梅沢かりん(32)の場合」(2003年/WEEKLY漫画アクション)
週刊連載を持っていると思われる女性漫画家。ネタ出しのために担当編集者に迫るが、そのときの編集のきったタンカが素晴らしすぎる。著者解説よれば「ある理由」で発表できなかったものがまわりまわってアクションに掲載とあるが、そりゃそうだろうと思わずにはいられない、各方面に対してたいへんな差し障りがありそうな名セリフです。素晴らしい。
「海女歌(前後編)」(2003年/週刊漫画ゴラク)
「二人は空気の底に」(1999年/COMIC CUE)
「ぷにぷに」(2002年/九龍)
著者解説によれば学年誌「小学6年生」用に描かれたものだとあるが、これは…学年誌が一学年無くなってもいい覚悟が必要な…確かに今の子に読ませてみたい作品ですが、だめなのかなぁ。こんなすすけたオタクだけが読んでてももったいないだけなんだがなぁ。
「小悪魔ボーイ」(2001年/WEEKLY漫画アクション)
「ロケット・フラワー」(2001年/九龍)
カバー裏に描かれた9点のカラーイラストは、一時連続して漫画アクションの表紙を飾っていたものだろうか? うち4点は帯に隠れて見えない。ありがたいような、もったいないような。