これこそ経営情報論
★★★★★
この本はアーキテクチャーの本ではあるが、その前に、企業情報システムと記されている点を注意したい。
もとより経営情報学は経営学と情報学との補完的な関係あるいは2つの領域の融合を目指しているわけではあるが、相変わらず経営学と情報学を並列的に、あるいはどちらかの視点が主で、もう一方が従である議論も少なくない。この本を読めばすぐわかるが、企業経営のなかでのアーキテクチャーの位置を確認し、それを構築している点が、大きな特徴であり、まさしく経営情報学とは何かを示唆している。
経営戦略との情報システムの関係の議論は、ながらくITは経営の道具、という俗説的アライメント論に振り回されてきた。つまり経営戦略をきめその道具としてIT、情報システムが構築されるべきだという議論が主流であった。
しかし、この本が強調しているのは、ITや情報システムが経営戦略に影響を与える、あるいは経営戦略に先立って情報システム、とりわけ基盤的、基幹的情報システムは構築されねばならないという点で、レディネス(備え)の概念を情報システム学の視点から、確認している。
経営戦略と情報システムとが双方向の関係にあり、そこにレディネスを高めるためにこそアーキテクチャーの役割があるのだと指摘した点で、歴史的な本といえる。つまり経営学と情報システム学が有機的に融合できることを示しているからである。ビジネスと情報システムとの間に、driveとenableの関係を持っていることを示している。まさしく、経営情報学の大きな成果である。