彼女を崇拝するあまり現実的にアプローチすることができず、別の女性と付き合っている男。彼女を崇拝するように友人付き合いしてきた女。彼女にアプローチしながら3ヶ月で諦め、なんとなくグループに居残ってる世渡りの巧い男。この三人の視点で物語は綴られる。
(ほかには、彼女を憎んでいると言って憚らず、彼女を通してしか恋人との関係を保てない女、彼女をモデルにしたとしか思えない漫画を書く女が中心的な人物だが、彼女たちの視点はない)
そして死んだはずの彼女からの手紙が届く。「わたしをころさないで――」
この人は、女性の目を通して女!性を書くと、崇拝のなかに冷たさが見え隠れしてリアルでいいなぁ。ガーデンでもそうだった。
でも男性視点の崇拝しまくり描写のほうがもっと好きですが。
あと複数視点で、今迄崇拝描写していたものの切り口を替えて多少、貶めたりするバランスもなんとなく好きです。氷室冴子チックな気も。
面白かったー。でも欠点は多いと思うしお勧め!とは言い切れない。でも好きです。
人に言えないことは誰にだってある。彼女の死後、仲間のもとに届くダイイング・メッセージとも呼べる「わたしのことを、殺さないで」という瞳子からの葉書。そのわずか数文字の中に込められた彼女の苦悩。一人の登場人物の台詞「本当にそう思う? 私たちが本当に大人になったって」――三十路間近の人間が言う言葉ではない。だが翻せば、時間の経過に追いつけない心の成熟が、今ひとつ瞳子を苦しめたものなのかもしれないと思った。