注目は、今回初めてCD化及びアルバム収録の「潮風通りの噂」。[詞:山川啓介/曲:大野雄二]で、佳孝氏は歌のみという珍しいパターンだが、これが意外?とイケている。派手さはないが、当時(78年)の歌謡曲の空気も感じ取れる佳曲。
以下、基本的には各アルバムの代表曲ともいえる作品が続くが、終盤3曲は本作ならではのシングル単独作品。特に「風の旅人」は、従来の“都会”でも“海”でもなく、“異国の地”、“旅”といった新たな傾向が顕著な名曲(アルバム『どこか遠くへ』のカラーにも通じる)。
なお、少しだけ難を言えば、もう何曲か“入っててもいい”曲があること。例えば、「日付変更線」「ソバカスのある少女」といった初期の名作や、これもシングル単独の「パレードは虹をわたる」(87年)など。収録時間にもまだ余裕があるだけに、ちょっと残念。
とはいえ、佳孝氏の音楽の多様性は十分楽しめる内容となっている。よくご存じない方やこれから聴かれる方には、とりあえず本作をお勧めしたい。