開発経済学者が書いた日本経済史
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本書は日本に留学している発展途上国の若手官僚向けに、明治から平成不況まで日本の工業化と国際経済への統合過程を講義するために作られたものである。
現在、発展途上国や社会主義からの市場経済への移行国は、経済発展のためにいやおうなくWTOやIMFや世界銀行などの国際機関に加入せざるをえず、国際機関から経済政策への介入をある程度受け入れざるをえないが、日本の経験から、先進国が要求する市場原理重視の急速な改革はそのまま受け入れずに、政府が自国に合うように翻訳し、漸進的な政策をとることを薦めている。
筆者が高く評価するのは戦後復興期および高度成長初期の日本の経済政策であり、それは漸進的、産業振興的、かつ国内の利益団体から独立していたと評価する。
時代の違いや、国内の政治状況がことなるので、今の途上国がどこまで参考にできるかは当事者に任せるほかないが、途上国の若手官僚に日本モデルをわかりやすく解説したことが本書の功績である。また日本人の学生が100年間にわたる日本の経済発展の要諦を学ぶ場合にも有益な本である。