日本経済史のすぐれた教科書、大変よみやすい。
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本書は、日本経済史家・昭和経済史専門家として最もすぐれた研究者の一人で、東京大学にて、数々の研究者、官僚候補生を育てた中村隆英による、それまでの研究成果を平易にまとめた入門書。初版は1970年台にまとめられ、二度改訂され、現在のものは1993年に改訂された第3版である。
1950年代以降蓄積されてきたマクロ経済学的な研究に立脚し、詳細なデータの分析とともに、大変読みやすい文体で、明治維新からバブル崩壊まで一気に語られる。マクロ経済学の枠組みだけでは説明できないポイントでは、思想・政治・文化などについても議論を紹介する。日本の歩んできた成長過程における、経済システム、経済政策、人々の生活、物価と景気、世界経済の変化の歴史が、非常に生き生きと語られる。
80年代以降に関する記述がほとんどないことため、最近のことについては他所で補うのがよいが、本書の記述は今も全く色あせない。戦時中の経済についての記述は浅い(当時、データなどが不足していたからだろう)ため、これらの内容については、岡崎『工業化の軌跡』などを参考にするとよい。