ファンの度合いによって評価は分かれる
★★★☆☆
基本的に回顧録というか記憶のメモみたいな内容で、いつ誰とこういうセッションをした、レコーディングをしたっていう話が大半を占めます。人物描写も結構出てきますが、あまり深くは描かれず、さらっと触れる程度です。
自分はアルバムはカインドオブブルーとあと数枚を聞いたことある程度でこの本を読んだので、最初期の思い出話は退屈でした。もっとマイルスの人生観などに触れたかったのですがその分量は大分少な目に感じました。登場人物それぞれの音楽が聞こえてくるようなコアなファンであるほど楽しめると思います。
ただこれは下巻についても同様なのですが、マイルス自身がアルバムの紹介をしてるので、良質の作品解説としての楽しみ方ができる点は気に入っています。
読み応えのある物語
★★★★★
自叙伝を読む醍醐味は、その書き手の息吹を感じるところにある。この点でマイルズデイビスの自叙伝は秀逸だ。
この本の魅力は、ジャズトランペッターとしてあまりにも有名な彼の人生をなぞることができる、というのはもちろんのこと、その歯に衣を着せぬ語り口を通して見えてくる、彼の音楽交遊録だ。ジュリアード音楽院を卒業しているマイルスは、音楽家としての自分を強く意識していたようだ。その中で音楽を媒介としてさまざまなミュージシャンとの交流のなかで、どういう時代に、何を考えながらトランペットを吹きつづけたのか、という事が活き活きと伝わってくる。音楽、政治、社会など、様々なことに対して「ファイター」という姿勢を保ち、時代の先頭を走りつづけたマイルズの葛藤こそが、この本のその中心であり、最大の魅力ではないかと思う。
Miles Forever !
★★★★★
マイルスを通してジャズ界の師弟関係、相関関係が良く判りますね。といいますか、マイルスがその中心に鎮座しているという事実が認識できるのですね。
後半は特に黒人としてのアメリカでの扱われ方を克明に説明しているのが、例え世界的なアーティストであっても同じなのだなぁと感じました。読むに連れて未購入のCDを注文していってしまい、かなりの数量になってしまった。
いつの時代も素晴らしいが本人の語る歴史を読みながら聴くと一味も二味も違うものですねぇ。読んで良かったと思います。
自信を持って生きるとはどういうことかを教えてくれた本です。
★★★★★
今から8年くらい前になりますが、私の社会人生活の転機になった本です。どうすれば周りから認められる仕事ができるのか、という私の問いに対して、「他人と違うことをすること。」、そして「周りに認められるというよりも、自分の仕事に自信を持てるようにすること。」ということと、それがどういうことなのかを明確に答えてくれた本です。ここまでハッキリと教えてくれた本もなかったし、会社の先輩もいませんでした。
この答えがどこまで正しいのかは分かりませんが、少なくとも、今でも自分の考え方の基礎になっています。
マイルスのジャズは「平凡」への徹底的な抵抗にあると私は思います。仕事から帰ってきて、そして週末と、マイルスを中心にJAZZばかり聴いていた時期があります。JAZZにのめり込む大きなきっかけになった本です。今、振り返ってみて、それなりに色々な音楽、小説、映画に接しましたが、マイルスのJAZZとこの本ほど、全くパッとしなかった私の生き方を「良い」方向に大きく変えてくれたものもないような気がします。少しでもマイルスに興味のある方は、とりあえず、手に取ってみることをお薦め致します。
JAZZの歴史
★★★★★
全体を通して底辺に絶えず流れている熱い黒人としてのプライド。
ジャズに限らず、真摯に音楽と向き合うその情熱。
その一方で音楽とは切っても切れない関係のドラッグ。
マイルス「でさえ」、人種差別を肌身に感じながら生きなければならなかったアメリカの状況にまず驚く。
それも80年代に入って以降でさえ。
マイルスは余計に音楽に深く没頭していったのだろう。