共感できるエピソード、にわかには理解しえないエピソード、色々あるが、共通して言えることは、彼らが紆余曲折の果てに手にした“喜び”はかけがえのないものだということ。それが伝わってくるから素直に祝福できる。
それもまた通過点なのかもしれない。
だから著者もあえてタイトルを“幸せ”ではなく“喜び”にしたのかもしれない。しかし、今彼らは確かに輝いている。
そして、“喜び”を見出すコツさえつかめば、それをふくらましてゆくことはできるにちがいない。
そんな私が、渋谷のキャッチセールス、老夫婦、多数の恋愛を重ねる女性、愛する会社の倒産を経験した人、離婚した人……、多様な人生を経験できるのが本書だ。
ノンフィクションだけに、語りに重みがある。普段の私にとっては風景として通り過ぎてしまうような人たちが、どんなことを考えて生きているのか。その一端にでも20代後半の今、触れることができた。そのことがとてもうれしい。