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喜びは悲しみのあとに (幻冬舎アウトロー文庫)

価格: ¥600
カテゴリ: 文庫
ブランド: 幻冬舎
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誰かの人生を包有し、提示するということ。 ★★★★★

一冊を読みおわってあとがきを読むまで、取材をする上原さんの自我を全く感じなかった。最後までずっと透明だった。

人は、みんな自分の視点からしか、世界をみることができない。
文庫版のためのあとがきに、恋人や友達に「おまえは人の気持ちが全然わかってない」と批判されたことについて書かれている。
どんなに細部まで観察して、一緒にいて、どれほど心を寄せているつもりでも、相手が「私のことなんてちっとも分かってない」と感じるのは、それがやっぱり自分中心の視座からしか人を観れていないからだと思う。

上原さんが書くときに思い出すのは、取材をした人々の、小さな仕草や表情なのだという。話すのが苦しいような話をするときに、手元のグラスの刺さったストローを回す手のこと。解説を書いてくれた鶴見俊輔さんを師とあおぐ人が、鶴見さんの前であおげば尊しを歌ったときの顔の皺。

個人的な鶴見さん贔屓を含めても、鶴見さんの解説がすてきなのは、上原さんをこう評価しているところ。
「売り物になる文章を書くところまで達した人は、そこでなんとなく、あとは、侫人になる。へつらう人という意味だ。だが、この人は、そういう人にならずに書き続けた。」

そう、人は、みんな自分の視点からしか、世界をみることができない。
鶴見さんは、「そのことは、しかし、共同の世界があることを否定しない」という。上原さんの提示するエピソードが、ひとを語る。それは確かに彼の目が観た、彼の書いた世界なのだけど、たくさんの小さな仕草や、表情や、周りの匂いや、色やそういうものがたくさんの人々の言葉と一緒に優しく包まれて、提示される。

上原さんの作品はこれが一冊目だったけど、アマゾンで探して出て来た本のタイトルがどれもそそるので、ほかにも読んでみようと思う。
市井の人々の苦しみや悩みを描くことで・・・・・ ★★★★☆
ルポライター・上原隆が人に会い、書き綴った18のノン・フィクションを1冊の書にまとめました。登場人物は、皆何かしら大変な重荷とともに人生を生きています。他者からみれば相当厳しい状況を背負っている人もあり、読み進めるのが苦しい話もありますが、実話ゆえ、しっかりと受け止めるべき内容が収められています。

大きな障害を背負う子の父親である小説家や、中学生時代にいじめられ続けた女性、離婚した父親の影がロボットに乗り移ったような26歳の青年、戦力外通告を受けながら復活した元エース、離婚に至る日記を書き綴る女性、リカちゃんに変身することで欲望を満たす自治体職員、68回も恋愛を繰り返す女性、定年後の姿を描いた黄昏時、子殺しの裁判を傍聴し続ける女性、職探しの厳しさを感じさせられる39歳の失業中の男性、会社の倒産の憂き目に遭った人々、渋谷駅前のキャッチセールスで生計を営む若者など、どの登場人物も心の傷を負いながら懸命に生きていました。

どんな人もそうですが、日常を生き抜くのに楽な生活をしている人は少ないでしょうし、実際、皆なんらかの苦しみを抱えながら、それでも生き抜こうとしています。
もがきながら歩くのに疲れた瞬間、本書『喜びは悲しみのあとに』を読むことで再び前に歩みを進める元気をもらえるような気がしました。
この作品はそのような性質をもっています。心の悩みを抱えている人には或る種の精神安定剤のような役割も果たせそうです。皆多かれ少なかれ悩みを抱えているわけで、それを共有化するだけでも読者の心の負担は軽くなるように思います。
そんな効用を感じながら・・・。
表現者の資質について(ありきたりな批評) ★★★☆☆
「友がみな」がとても良かったので期待して読んだが、それほどでもなかった。取り上げられたエピソードのインパクトが弱いせいかな、と思ったが、あとがきをよんで納得した。前作が評価されることで作者は自分の「テーマとスタイル」を手に入れ、同時に自信を得ることができたが、それと引き替えに創作の原動力となっていた劣等感を失う結果になった。先の見えない不安や寂しさを抱えて生きる無名の人々の視点に立つのが難しくなったのだ。もちろん、満たされない日々を過ごすのはしんどいことで、それを脱することができた作者には、おめでとうと言うべきなのかもしれない。
代わりに書いてあげればよかったかな。わたしはまだ、救われてませんから。
一瞬の煌き ★★★★★
小説かと思ってしまう書き出しの巧みさにグイと引き込まれる。
小説を書く上で「説明と描写のちがい」ということがよく言われるが、この文章には確かに「説明」はなく、いらないものをとことん削った「結晶」が残っている。

共感できるエピソード、にわかには理解しえないエピソード、色々あるが、共通して言えることは、彼らが紆余曲折の果てに手にした“喜び”はかけがえのないものだということ。それが伝わってくるから素直に祝福できる。

それもまた通過点なのかもしれない。

だから著者もあえてタイトルを“幸せ”ではなく“喜び”にしたのかもしれない。しかし、今彼らは確かに輝いている。
そして、“喜び”を見出すコツさえつかめば、それをふくらましてゆくことはできるにちがいない。

今読めてうれしい ★★★★★
私は今、20代後半。ふつーの会社員だ。

そんな私が、渋谷のキャッチセールス、老夫婦、多数の恋愛を重ねる女性、愛する会社の倒産を経験した人、離婚した人……、多様な人生を経験できるのが本書だ。

ノンフィクションだけに、語りに重みがある。普段の私にとっては風景として通り過ぎてしまうような人たちが、どんなことを考えて生きているのか。その一端にでも20代後半の今、触れることができた。そのことがとてもうれしい。