美しい景色と、おばあちゃんの笑顔に感動!
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この本を「写真集」とひとことで言うと、イメージが限定されすぎてしまう。それぐらい文字と資料が多い。著名人のコラムも充実している。でも500点以上の写真を使っているそうだから、「写真集」なんだろうけど‥‥。(四季折々の景色も美しい)
この本は、徳島県の田舎・上勝町で、山の葉っぱを料理のつまものとして出荷する農家を、一年かけて撮影し、紹介する文章をつけて構成されたものだ。このつまもの事業「いろどり」は20年を経て、市場規模2億5千万円まで成長し、高齢者が楽しく忙しく仕事をし、高収入(中には年収1千万円の人も!)だというので、全国から視察に来るようになり、国内外のメディアにも頻繁に取り上げられるようになった。その成功のストーリーも紹介されている。
圧倒的なのは写っている高齢者の笑顔だ。(表紙のおばあちゃんは94歳らしい!)70代、80代でも自信に裏打ちされた本当に良い顔をしている。最近は、若いうちに儲けてさっさとリタイアしたいなんて言う人もいるけれど、そんな気持ちは吹っ飛ぶくらい、死ぬまで現役!と笑うお年寄りの姿に感動させられる。
この上勝町も20年前は、朝から酒を呑んだり人の愚痴や悪口ばかり言ってる人が多かった、という事実も圧巻だ。それが、地域にすばらしいものがあることに気づいて、仕事を創出し、良い循環を巻き起こして、いまでは若い人たちがIターン、Uターンするまでになった。「補助金がないのが悪い」「公共事業が減ったのが悪い」と言っている地方の人間にとっては、参考にすべきことが山盛りだと思う。
それにしても値段が破格だ! A4判208頁オールカラーでこの値段なんて、商業ベースではあり得ない。「この笑顔を多くの人に届けたい」という、執念にも似た出版元(徳島の写真館の123周年記念事業としての出版)の、熱い想いが感じられる。