吉本隆明の今
★★★★★
「芸術言語論」への覚書は、前半の51頁までといえます。
昭和天皇の歌集『おほうなはら』について、
「その歌はひと言でいってみると古今集風の帝王調の歌、
統治者としての意識に充ちた歌が8割か9割を占め、
そのあいだの1割前後が、歌人としての純粋な叙景歌や叙事歌と言うべきかもしれない。」(41頁)と指摘して、
自然詠歌人としての力量を認めて評価しています。
以下は、未発表の「人生についての断想」と
雑誌などに掲載されて単行本未収録の「状況との対話」が納められています。
見逃したものもあって、著者の近稿が読めて便利でした。
「なぜそうまでして書くのかといわれれば、
それは引っかかりのあることにたいして考えて解決せずにはいられないからだ、
ということができます。
僕自身にとって切実な問題はすべての人にとっても切実でありうる、
というところまで行きたい。」(119頁)
おだやかな決意表明と受け取りました。
まだまだがんばって研鑽を積んでその成果を発表していただきたいと思いました。