犯罪者心理をよく理解されている
★★★★☆
先日、裏の住宅が泥棒に入られた。
犯人は庭にあった物置(かなり大きいタイプ)を足場にして
住居に進入したようである。
その家はしかも、普段留守がちであり、かつ部屋にはカーテンを
昼間でもしていた。
まさに、犯罪は「この場所」で起こったのでした。
自分の家の防犯のために本書を購入しました。
本書は、従来の犯罪者の心理にウエイトを置く犯罪学ではなく、
場所にウエイトを置く考え方です。
写真も多く、また外国での防犯対策例を列記されていて
今後の参考にしたいと感じました。
しかしそれにしても、近年の犯罪者の狡猾なこと。
警戒している区域を少し離れて、より目の届かない場所を
選ぶという。
本書だけで犯罪の抑止力となるとは思えないのですが
犯罪者に犯罪を少しでも躊躇させるために、あらゆる
防犯対策を尽くす必要があるのだと思います。
すこし
★★★★★
犯罪の起こりやすい場所を具体的に指摘。たとえば個人住宅でも塀は低い方がよいとか、塀に花などを飾っておくと乗り越え難いなど、心理的分析は参考になります。私の家も裏側が工事で高い柵があったときに、あやうく泥棒に入られそうになりました。どこからも見通しの良いところでは、犯罪は起こりにくいことを実感します。
「場所」だけが犯罪を起こすのか?−−犯罪は、脳と「場所」が起こす。
★★★★☆
この本は、社会学者の小宮信夫氏が、近年多発する、子供が犠牲と成る犯罪を中心に、犯罪が起きる場所に注目し、いかなる場所で犯罪が起きるのか?を分析した、一書である。
小宮氏は、犯罪の5W1Hに関して、「誰が?」「何故?」と言った事に注目する事は、犯罪の予防に繋がらないと考える。それよりも、「何処で?」に最大限注目する事で、はるかに効果的な犯罪の予防が可能に成る、と言ふ趣旨の議論を展開する。
小宮氏の分析は、具体的で、実践的である。現実に、子供が犠牲と成る事件がこれだけ多発する状況の中で、今すぐ出来る防犯対策は何か?と考えれば、小宮氏がこの本で提起した問題と提言は具体的であり、非常に価値の有る物である。
しかし、その反面、小宮氏が、犯罪の発生における「場所」の役割を余りにも強調して居ると言ふ印象は否めない。近年、犯罪における脳の役割が、次第に解明されつつある事を思ふと、小宮氏が、そうした犯罪における脳の問題を論じようとせず、ただ、「場所」の問題ばかりを強調して居るのは、何故なのだろう?と考えてしまふのは、私だけだろうか?−−小宮氏がこれだけ「場所」を強調して居るのを読むと、小宮氏は、「リベラル」的な心情から、犯罪における脳のファクターを認めたくないのだろうか?等と考えてしまふ。
そうした問題は有るが、犯罪予防の為に、この本は、極めて実践的な指摘を行なっており、多くの人々に読まれる事が期待される。
(西岡昌紀・神経内科医/大阪池田小事件から5年目の日に)
犯罪対策のパラダイム・シフト
★★★★★
欧米諸国の犯罪対策は、1970年代までは、犯罪者の人格と境遇に注目する犯罪原因論に基づいていた。しかし、犯罪の原因の究明も、それを除去するプログラムの開発も困難であり、再犯率も低下しなかった。その反省から1980年代に生じた発想の転換は、原因論(規律訓練型、根本的解決志向)から機会論(環境管理型、問題点の極小化志向、確率論)へ、事後的処遇から予防へ、犯罪者の視点から被害者の視点へ、人の心への注目から場所への注目へ、大規模な統一的対策から身近な対策の積み重ねへ、という形で表現しうる。今や欧米化しつつある日本社会でもこうした対策は参考になるはずだと考える、犯罪社会学者である著者(著者の経歴については本書裏面を参照)は、特に場所に関わる領域性と監視性に注目し、ハード面での対策として防犯環境設計と監視カメラの例を、ソフト面での対策として割れ窓理論や地域安全マップ作り等によるコミュニティ再生プログラムの例を挙げる一方、補完的な措置として再度新たな原因論=加害者の立ち直りの機会の確保(多様な機関の提携による早期介入、メンタリング、親業命令、修復的司法等)についても述べている。本書は理論の紹介のみならず、データや具体例(写真付き)も豊富に挙げており、非常に説得的である。また、単にハード面で防犯環境が整えば、或いは強硬策がとられれば、犯罪が減少するというような、単純な発想に著者は与さず、常にハードとソフトをみ合わせ、犯罪対策が街づくり、人づくりと連動しなければならないという提言も、非常に的確であると思われる(特に割れ窓理論や監視カメラに関してこの側面を強調しておきたい)。ただし当然のことだが、こうした犯罪対策が濫用されて監視社会化が進む危険について、私たちは常に配慮せねばならないし、また日本でNPOをいかに成長させるか等についても、一層の模索が必要であろう。
終わりなき「原因論」から抜け出すために
★★★★★
犯罪を減らすのは、「命の教育」や「心の闇の解明」では、決してない。その様な抽象的な議論に終始することは、不毛であるばかりか、本当に効果的な犯罪対策とは何かについての理解を妨げ有害でさえある。
社会学者や心理学者たちによるキリのない「原因論」に辟易していた自分にとって、この書は本当に斬新かつ説得的で、感動を禁じ得なかった。これからの犯罪対策が「機会論」の方向へ進んで行くことを願う。
なお、後半は諸外国の制度の説明が多く少し飽きるが、前半だけで十分満足できる。