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鬼火の町<新装版> (文春文庫)

価格: ¥590
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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無実の人を救うために、十手さえ失う藤兵衛 ★★★☆☆
松本清張といえば、社会派推理小説作家、それも大先生というイメージなのだが、松本清張にも弱点がある。
それは、3つある。
・謎解き部分がいきなり始まって、探偵役の人物がとうとうと語り始めるところが不自然。
・探偵役の人物の推理が、思い込み(しかも正解)により、執拗に裏付けを取ろうとするところ。
・警察官でも検察官でもない一般人が探偵役の場合にも、警察官や検察官と同じような捜査(取材?)をするところ。

こんなことを無名の作家がやったら、いっぺんで読む気をなくしてしまうのだが、松本清張の筆力では、ちっとも興ざめせず、最後までひきつけて読み続けさせるのだ。

それが時代小説になったら!
上記の「探偵役の人物の推理が、思い込み(しかも正解)により、執拗に裏付けを取ろうとするところ。」がごく自然な展開になるのだった。

駒形の藤兵衛は腕利きの岡っ引きだが、上司の同心川島に、担当を外される。
しかし、捜査を続けるために、お役ご免となってしまうのだが、それでも捜査を続ける。
従って、強引な捜査をする。

怪しいとにらんだ坊主を拉致する。監禁する。
事態が進展しないので、ちょっと締めて自白させる。

それで一気に解決するのだが、江戸時代のことなので、このくらい強引なことをやっていたのだろうと思える。
それに、藤兵衛は無実の人を救い、悪を暴くためにやっているのだから。
よかったよかったと最後に思って、本を閉じられるのだった。
当世事情と犯罪 ★★★★☆
江戸時代の歴史背景から、
犯罪が複雑化している様が良く描かれている。
かの時代の政情や大奥の知識があれば
もっと楽しめたかもしれない。
せめてNHK『大奥』を観ていたならな・・・
上手い具合に当世事情と犯罪を結び付けていて
読み応えのあるミステリー。

ラストの終わり方は、あまり私の好みでない。
手法としてはアリなのだろうけど、拍子抜けしてしまう。
まあ、好き好きなので。
登場人物では、釜木進一郎がいいとこ取りしすぎじゃないかと
思ったりもするのだが。
あまりに颯爽としていて格好いいので疑ってしまう存在だ。

舞台となる時代は異なるものの、上下関係というのは
いつの世も変わらないものだな、と思う。
しみじみするのは、私も歳を取ったのか。

それにしても、組織犯罪は怖ろしい。
現在でも闇に葬られた犯罪は多いのだろう。