途中で止められず、夜を明かして最後まで読んでしまった!
★★★☆☆
爽やかヒーロー島田新之介が活躍する時代小説。
なのだが、ちょっとかわいそうなのが、登実(縫)。
スパイを申しつけられ、大奥に潜入する。
危険だ、危険だと言われつつ、あえなく犠牲になってしまう。
娯楽小説なんだから助かってもいいのに。これはちょっとかわいそ過ぎる。
解説によれば、推理小説の手法を駆使した、痛快娯楽時代小説とのこと。
実際面白い。上下巻それぞれが500ページ以上あるのだけれど、下巻に至っては、読み始めたのが夜の10時頃だったのだけれど、
途中で止められず、夜を明かして最後まで読んでしまった!
松本清張といえば、昭和30年代を背景にする推理小説(心理小説)が最も得意と思っていたのだけれど、歴史小説も面白い。
松本清張が関ヶ原の戦いを題材にしたら、どんなことになるのだろう!
読んで損なし、大奥エンターテイメント
★★★★★
時代は、11代将軍家斉の晩年。
この家斉という男、15人以上の妻妾に50人以上の子を産ませたというツワモノ。
側室・お美代の方を献上した中野石翁、
小納戸役の小身から「向島の隠居」と呼ばれる幕閣の黒幕へ。
まさに大奥全盛の時代。
花咲き乱れる大奥の、桜満開の吹上で、ある事件が起こります。。。
家斉寵愛の側室が・・・
その事件をきっかけに始まる、打倒石翁の動き。
面白いのは、
お縫や島田又左衛門、新之助といった市井のレベル、
石翁、水野美濃守、水野忠邦といった幕閣のレベル、
さらに権力者ですら思いどおりにできない大きな流れのレベル、
3つのレベルが意識されているところ。
市井のレベルの動きが、権力を、時代を動かすことができるのか。
それとも、彼らの奮闘は無為に帰するのか。
本書の一つのテーマ。
そして、卓抜な構成力。
1つの権力闘争が描かれるわけですが、それを構成するのはいくつもの小事件。
「神の高み」に立ちつつ、いろいろな人物の視点からそれらの小事件を描いていく。
結果、描き出される一つの絵屏風。
蜻蛉は儚い運命の権力者か、権力をめぐる人々の様こそ陽炎か。
とにかく読んで損のない大奥エンターテイメントです。