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秘密 (文春文庫)

価格: ¥700
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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有限の「生」の中に吹き込まれた、「永遠」の愛とむなしさ ★★★★★
傑作でしょう、間違いなく。

なんで、傑作だと思うんだろう。
泣けて泣けて仕方ない、ということはない。
でも、読んでいる途中も、読んだ後も、「心」がむなしくて
仕方ない。永遠に生きていきていきたい。

いや、この物語が、どうか終わらないで欲しい。
そんな感覚、感動がいつまでも、残る。

なぜなんだろうか。

夫婦って何だろう。
肉体と心って何だろう。家族ってなんだろう。親娘って何?
人間が生きるって何?年齢を重ねるって何?

結局、この世に生まれて、結婚して、子供を育てて、
この世代の継承と、自分には何の意味があるのか?

このファンタジーにはさまざまな気付きを読者に与える
インパクト、パンドラの箱が入っていました。

東野圭吾は、傑作を書きました。
それは間違いがありません。
読んでいる時間以上に余韻の残る素晴らしい一冊 ★★★★★
私は、この物語は人間の誰の中にもある現実を、見事に表していると思います。本当に愛し合う夫婦の間にも、ギクシャクとした空気が流れる・・・
私も、映画・ドラマ・原作本のどれにも接しましたが、やはり原作の設定が一番だと思います。ドラマや映画では時間を省略するためか、事故にあうのは年頃の「藻奈美」ですが、やはりこの話は「小学生の藻奈美」が主役であるほうが作者の意図が明確になるような気がします。
この物語には「事故後自分の子供となった直子を守ろうとする平介の愛」。「思春期になった藻奈美(直子)が平介に嫉妬させないように気遣う愛(これが逆に嫉妬を煽ってしまいますが)」、「通常の親子に戻り直子を悩みから解放させようとする平介の愛」、「とは言っても自分が直子のままでは平介が平常心ではいられないことを理解し、藻奈美になりきろうと決めた直子の愛」。それ以外意にも「昔別れた文也を本当の子として助けようとする梶川の愛」など多くの愛がちりばめられています。
しかし、すべての愛の裏にはその犠牲になっている人もおり、それが納得できない読者の方を生んでいる理由だろうと思います。特に、高校生になった直子が平介を裏切ったようにも取れる行動をしますが、私はそうは思いません。私たちだって、家族がいても病院の看護婦さんに心ときめいたり、ママさんバレーのコーチに淡い恋心を抱いたりしますよね。直子も自分の立場は理解しつつも、この程度の心の動きだったのではないでしょうか。でも、心配させまいとして語らなくなった直子と、それによって疑いを募らせた平介。二人のすれ違いは極限に達したのではないかと思います。
いずれにしても、私はこの本を読み終わり、私は他の方々がどのような感想を持たれたのかに興味を持ち、インターネットで多くのレビューを読みました。そして、「あの時、直子はあんな態度しか取れなかったのだろうか?」、「平介が素直に自分を晒していたら・・・」、「直子は本当に藻奈美になりきるしかなかったのか?」、「結婚式の後、二人はどうなったのか?」等々、この小説の続きを書いてみたくなるほどいろいろ考えました。他の多くの方もおっしゃっているように、読んでいる時間以上に、尾を引き余韻の残る素晴らしい一冊です。
直子の心の揺れ・・・(ネタばれあり) ★★★★★
娘の体に精神を宿した直子。「娘に最高の器を残す」という使命の中、前半はコミカルに話が進む。
しかし、高校を迎えたときには、娘のための努力が愛する夫を傷つけてしまうものでしかなくなってしまう。

直子は悩みに悩み抜いた上で、一つの提案を平助にする。
セックスをして、夫婦としてのつながりを戻そうということだ。
もちろんそれがうまく行くか分からないが、それに賭けてみないかという提案だ。

平助がそれを受け入れ、体は父娘のままセックスをし、精神上夫婦としてつながり合いながら生きていくという選択肢もあっただろう。
もちろん、世間には言えるはずがない、秘密な生活として・・・
しかし平助は理性でこれを拒否した。拒否せざるを得なかった。
いつか娘の精神が戻ったときに、最高の器を残したい、それは直子だけの願いではないのは言うまでもない。

直子はまたしても悩むことになる。自分の存在のせいで愛する夫を傷つけ、何も解決策がないまま過ごすだけしかできないのだろうか。
そんな中、平助から重大な決断が下されたことを聞く。今後は直子を娘として扱うと。直子を苦しみから救うのはこの方法しかないと。

夫の自分に対する深い愛情を聞いた直子も、悩んだ末に一つの決断をする。ならば、夫が一番傷つかない形で、その愛に応えよう。
それを永遠に自分の秘密にしよう。


・・・直子の心情は意図的に書かれておらず、人によっては自分勝手な女と映るだろう。
自分には、直子も、その心を大きく揺らし悩みながらそれを一人で抱えていた、可哀想な女に映る。
心に残る本でした。 ★★★☆☆
テレビドラマが始まったことを切っ掛けにこの本を注文し数時間で読破しました。
後半のスピーディーな展開は時間を忘れさせてくれます。
そして、多くの皆様がレビューで語ったようにラストで心が揺れました。

夫目線から話を進めることで、物語の核心となる妻の気持ちを「秘密」にしている
ことで、私は色々な事を考えることができました。

物語の本質が「裏切」であるのに、「愛」を感じることができる不思議な本。

評価が低いのは、私がこの本について出した結論が、
「日常から逸した出来事の為に、心変わりした妻を許した優しい夫の物語」
であり、それが後味の悪さが残したからです。
秘密ドラマ化に寄せて ★★★★★
私は映画版を見て「秘密」形を変えた夫婦の生き方について衝撃受けた記憶は今でも鮮明に覚えてます。交通事故をきっかけに亡くなった母は娘の体に宿り生きていく葛藤、夫婦としての葛藤など多くの難関が二人に降りかかる物語に感動しました。映画版と設定違いますが伝えたい想いは同じです。ラストに向けての付箋は小説版が詳しいです。2010年TVドラマとして放送開始で視聴して満足しました。あのラストへ向かってのドキドキ感は切なくも儚なくもなります。これからの展開見守ります。