力まない、社会派(風)エッセイという感じでしょうか
★★★★☆
携帯電話やインターネットの普及状況に関する文章から推定して1990年代半ばから、2001年の同時多発テロ発生後しばらくまでの5〜6年間に書かれたエッセイのようです。
タイトルどおり、たしかに旅先を題材にしたものが多いかなという印象ですが、家族のこと、谷根千界隈の出来事もちゃんと入っています。
出来事に関しては10年ひと昔の感がありますが、出来事に対する考察は少しも古臭さを感じさせず、今もその課題は解決されていないことに驚きます。
森まゆみさんのおっとりとみえて相当鋭い語りが好きなので、本作もたいへん面白かったです。
2002年みすず書房刊行の「にんげんは夢を盛るうつわ」の改題文庫化だそうですので、ファンの方は重複にご注意下さい。
蛇足ですが、安野光雅さんのあとがきがどうも私は好きになれなくて読後感をすこし殺がれました。絵は好きなのですけれども。